金価格を占う5つの要因

現在の金市場は、堅調に推移しているものの、トランプ大統領の政策の不透明性といった様々な要因により流動的な状態にあります。金市場が今後どのように推移するのか、非常に見通しにくい状況です。その中でも、金市場の行く末を検討する上で重要な要素は、主に次の5つでしょう。

  1. 不確実性プレミアムの上昇
  2. 脱ドル化トレンド加速の可能性
  3. リセッション/スタグフレーション・リスクの上昇
  4. ドローダウンおよびボラティリティ・ヘッジ
  5. 流動性ヘッジ


今回は、これらの5つの要素について解説しながら、今後の金市場の動向について私の見解をご紹介します。

①不確実性プレミアムの上昇

トランプ政権が4月に提案した相互関税は、既にボラティリティやドローダウン・リスクの上昇に苦しむ投資家にさらに大きな不透明感をもたらしました。実際、金は米国の関税政策発表前の2025年第1四半期に、四半期ベースで1986年以来の高リターンを記録しました1

貿易政策は流動的です。二国間交渉が行われ、関税率が引き下げられる可能性があります。ただ結果の確率分布は広がりつつあります。またタイミングも不明です。こうした分散リスクは、結局のところ、金のアロケーションおよびETFへの資金フローに有利に働きます。

関税引き上げの実施は90日間猶予されており(中国を除く)、市場は世界の貿易政策の行方を見極められていません。そのため、不安がフィードバックループのように広がり、消費者が支出をさらに切り詰め、事業・設備投資が抑制され、雇用の伸びが鈍化する可能性があります。米成長予想と企業の業績見通しが見直されればセーフヘイブン(安全な逃避先)*資産としての金に対する投資家需要は押し上げられるでしょう。

1 ブルームバーグ・ファイナンスL.P.,2025年3月31日時点。

*経済的緊張が高まっている状況下では、その他投資対象の価値が下落しても、ある資産の価値は安定または上昇するという投資家の認識に基づいて、「安全な逃避先」と考えられる資産があります。安全な逃避先と考えられている資産の価値がいかなる時でも維持される保証はありません。