④ドローダウンおよびボラティリティ・ヘッジ

金は低ボラティリティ資産とされており、株式の持ち高解消の影響を緩和するために戦略的にポートフォリオに組み入れられることも多くあります。3月には、金価格のボラティリティはS&P500指数のボラティリティを7ポイント下回りました。4月には、30日米国株式ボラティリティが約53%となった一方、金価格のボラティリティはその半分以下の水準となっています6。金は3月/4月にポートフォリオ・プロテクションを提供した一方で、過去18ヵ月間でアルファを創出しています。この事実から、金融商品としての需要が旺盛な実物需要に追いつくなか、金価格に対するセンチメントは強気にとどまりそうです。

6 ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、2025年4月11日時点。

⑤流動性ヘッジ

金を世界的に流動性が高く代替可能な資産として資金調達やポートフォリオ・リバランスのために利用すると、状況によっては金価格のマイナス要因となる可能性があります。しかし押し目のたびに買いが入り続ければ、いずれ1オンスあたり3,000ドル超が新たなベースライン価格であることの認識がさらに進むでしょう。実際、金価格は月初に1オンスあたり3,000ドルを割り込んだ後、4月7日の週の終わりには上昇して1オンスあたり3,225~3,235ドルという記録的水準で週末を終えました。

当社は、金市場は高ボラティリティ環境下で不安定化し5~7%下落することもあるとみています。それでも、金価格に対する見通しは弱気ではなく強気です。とりわけ、現在のように世界の貿易・経済秩序が変化する可能性がある時はなおさらです。

世界の経済秩序が実際に重商主義・保護主義へと再編されるのであれば、金価格にとって構造的な追い風となり得る上記5つの要因は、金価格は2025年後半に1オンスあたり3,400ドルに達するという強気シナリオのさらなる支援材料です。また、スタグフレーションと同時に脱ドル化が加速するなど、特定のマクロ経済環境下では、今後数年で1オンスあたり4,000~5,000ドルまで上昇する可能性があるとの見方に対する信頼性も高まります。