③リセッション/スタグフレーション・リスクの加速
当社は4月2日の関税発表前から、金市場は米国経済への懸念を示していると指摘していました。近年の類似事例に基づくと、金銀比価や金建てでみたS&P500指数は、米国がすでにリセッション入りした、あるいは2025年後半にリセッション入りするリスクが上昇していることを示しています。さらに4月の原油価格下落やタイム・スプレッドのセルオフは、総需要ショックが下振れするリスクや市場が燃料需要と貿易フローの減退を予想していることを反映しています。
米国で頻繁に取り沙汰されるようになったスタグフレーション懸念(3月の米連邦公開市場委員会[FOMC]のコメントや最近のFRB高官発言に反映2)は、基本シナリオではないものの、金投資需要の支援材料になるでしょう。
米中貿易摩擦は激化しつつあり、長期化する可能性もあります。世界の国内総生産(GDP)の約45%を占める二大経済大国の経済的対立は、世界の成長見通しにとって明らかなリスク要因です3。中国は米国にとって2番目に大きな貿易相手国であり、関税の報復合戦がエスカレートすればサプライチェーンが阻害され、物流が混乱し、インフレ上昇につながる可能性もあります。
そうなれば成長が低迷する環境で政策金利の正常化を目指すFRBは難しい状況に陥ります。また外貨準備として保有する金の割合を増やそうと考える国が中国以外にも広がる可能性があります。
金はリセッション(景気後退)中から直後にかけて好調なパフォーマンスを見せる傾向があります。これは世界金融危機後やコロナ禍中の2020年に観察されました4。金のアウトパフォーマンスは近年でも金融市場のストレス時に顕著になっています。たとえば2022年のロシア・ウクライナ戦争勃発、2023年3月から5月の米地銀危機、そして現在などがあげられます5。
2 FRB.,2025年3月
3 Worldstastics.net,2025年1月
4 ブルームバーグ・ファイナンスL.P.,全米経済研究所、2025年4月11日時点。
5 ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、2025年4月11日時点。