企業年金のガバナンスと言えば日本では数年前まで確定給付企業年金(DB)の世界の話だけだと思われてきましたが、確定拠出年金(DC)においても「ガバナンス」が大切だと言われるようになってきました。

さっそく、DCにおけるガバナンスの具体的内容から紐解き、実態や課題について見ていきましょう。

企業型DCにおける「ガバナンス」にはどんな項目が?

「企業年金のガバナンス」とは、制度の目標の設定・達成のための手段の検討・実施状況のモニタリング、改善提案といった制度のPDCAが誰の目から見ても健全に行われるような仕組みの整備を指します。

DBでは資産運用委員会や総合型基金での代議員のあり方などが議論され、必要な法制上の手当もなされてきました。

一方、DCについては、OECDの企業年金に関するガイドラインにおいてDC特有の事項として、以下の4点を制度運営者に確保するように挙げています。

・適切な運用商品の加入者に対する提供(デフォルト商品を含む) ・提供商品の実績モニタリング ・加入者が負担しているコストが適正であること、またコスト内訳の加入者に対する開示 ・加入者に対するガイダンスの提供、および関連する場合には将来給付予想額の提示

最初の3項目は、運用商品に関連する項目となっていて、適切な商品を提示することが確定拠出年金においては大変重要であるということを示しています。ご存じの通り、それは運用商品が、企業型であれば会社が、個人型確定拠出年金であればそれぞれの運営管理機関があらかじめ用意しているものに限られ、その中から加入者は自分で選んで掛金を運用し、受取額はその運用結果次第で決まるためです。受取額にダイレクトに影響しますから、適切な運用商品が選定されていることは、とても大切です。

また、4つめの項目は加入者に「この商品のまま60歳まで運用すると受取額としてこれくらいです」「公的年金等と合わせて老後資金として想定している額に達していますか」というようなことも示しながら商品選択をサポートしていくといった、継続教育です。こちらも、加入者自らが運用するDCならではの欠かせない事項かと思います。