DCガバナンスのための体制作りや継続教育には課題が残る

商品という軸ではガバナンスの兆しを感じるものの、ただ「体制整備」に目を移しますと、DCガバナンスと言える体制は「特にない」が残念ながら半数を占めている状況です。


「企業型確定拠出年金(DC)担当者の意識調査2020全体報告書」内
「Q4.DCのガバナンス(モニタリング)体制」の結果


「特にない」とは、おそらく担当者個人が運営管理機関から「提示商品の実績」「提示商品のモニタリング結果」「加入者の運用状況」といった報告を受け、担当者個人が現状のままでよいかどうか判断を下してしまっているということです。

企業型DCの担当者は、人事や総務部門の方が担当となっていることが多く、「金融商品の最新動向に触れる機会があまりなく、運用商品について詳しくはないのです」と仰る方も珍しくはありません。もし、金融商品などに詳しい担当者だとしても個人が、社員全員の老後資産を運用する商品について単独で判断するというのは重過ぎる気がします。

次に「DCガバナンスの体制」として回答が多かったのは「担当部署内で情報共有」42.8%で、先ほどの個人単独から複数名でのモニタリング体制になっている点は安心かと思います。

しかしできるならば、労使双方のメンバーが入った会議体で定期的に報告し、「商品」や「加入者教育」の課題を共有し、課題解決のための議論することが望ましいと言えます。経営者側が入ることで、加入者教育に必要な時間や予算がつきますし、労働者代表が入ることでより加入者視点の意見や要望を制度運営に反映していくことができるからです。

最後に教育の状況についてみてみましょう。
 

継続教育の実施について 2005年~2020年の結果

※「企業型確定拠出年金(DC)担当者の意識調査2020全体報告書」内「Q7.2017年以降の継続教育の実施について」と過去調査の同様の質問の回答結果を合わせ、独自に作成


加入者教育については過去13年あまりの経過をみると、過去3年以内に継続教育を実施した割合は残念ながら6割程度とあまり変わりません。

しかし、その実施している企業では、より効果と継続性を追求し、ライフプランセミナーやキャリアセミナーの一部に短時間組み込んだり、集合しなくても学べるeラーニングやzoomを使ったライブセミナーを活用したりと大きく変わってきています。

確定拠出年金教育協会では、こういった継続教育やガバナンス体制について素晴らしい取り組みをされている企業を「DCエクセレントカンパニー」として毎年数社選出させていただき、モデル事例としてご紹介させていただいておりますので、企業担当者の方はぜひ参考にしていただけたら幸いです。

一方で、4割の導入企業では継続教育ができていない実態があり、運営管理機関や企業担当者からは経営層の理解がなく加入者教育に予算と時間が割けないという声も耳にします。教育を含む「DCガバナンス」は経営側の理解が欠かせません。一人一人の社員の60歳までの運用期間が刻々減っていることを思うと、もう一段ガバナンス強化が進み健全な環境で老後資産作りが進むことが望しいと考えています。

また、会社規模による差という課題も残っています。2016年の法改正以降、DCガバナンスに徐々に光が当たり、社員数300人以上の比較的規模の大きな企業ではその動きが少し見られるようになってきました。しかし、現在約750万人いるDC加入者のうち、その恩恵にあずかっているのはごく一部です。

「DCガバナンス」について必要性・重要性をもっと広く知ってもらうとともに、今後具体的な事例が多く紹介され、企業型DC制度がより健全な形で運営され利用されていくことを心から期待しています。
 

今回ご紹介した『企業型確定拠出年金担当者の意識調査に関する調査結果』は確定拠出年金教育協会のホームページからどなたでもご覧になれます。