自由の国アメリカでは選択の自由が不可欠と言える一方で、必ずしもその選択の自由が理想通りに機能していないという現実があるということを前回(アメリカの401(k)や健康保険に見る、「自助努力」の不都合な真実)書きました。良い選択をすることは、アメリカにいる人々にとってもやはり難しい課題なのです。そんな中、良い選択肢を準備し、選択の負担を少なくする仕組みが提供されていれば、大変心強いものです。今日は、ここアメリカでのそんな前向きな動きをお伝えします。
シンプルかつベストな選択肢として、ターゲット・デート・ファンドが定着しつつある
ファイナンシャルプランナーとして仕事をしていると、クライアントの方々のさまざまなニーズに取り組む機会がありますが、どんなケースでもほぼ間違いなく絡んでくるのがリタイアメント資金の準備と運用です。雇用主の提供する401(k)などの確定拠出制度や、個人リタイアメント口座(IRA)と呼ばれる税優遇のある投資口座(日本のNISAに似ています)を利用しての資産運用についてのアドバイスです。
この種のアドバイスは、ここ5年くらいの間に大変シンプルになりました。というのも、最近ではご相談いただくケースの8割以上で、ターゲット・デート・ファンドと呼ばれるファンドの選択が可能となっており、多くの場合この選択がシンプルかつベストであるからです。
よく「初心者にぴったりの資産運用」とか、「〇〇(という金融商品)は上級者向き」とか、あるいは「富裕層向け投資法」などという表現を目にしますが、投資経験や資産の多寡に関わらず、投資の基本は同じではないかと感じています。
投資の基本は、まず第一にリスク分散。特定の業種、特定の国に集中させず、世界の株式市場にリスク分散します。第二に、手数料を極力下げること。市場インデックスをフォローするインデックスファンドであれば、そもそも手数料が低いのが普通です。第三に、許容できるリスクに応じて株式ファンドに債券ファンドを混ぜてリスクを抑えること。第四に、市場が良くても悪くてもただただコンスタントに積み立て続け、市場が良くても悪くてもただただ持ち続けること。これらが投資の基本であり、また多くのケースでは“投資のすべて”と言ってもよいほどだと思います。
この基本の実現を簡単にしてくれるのがターゲット・デート・ファンドです。アメリカには今50種を超えるターゲット・デート・ファンドがありますが、主要プレーヤーのファンドはどれも、米国株式インデックスファンド、米国以外の外国株式インデックスファンド、米国/外国債券インデックスファンドの基本的インデックスファンドを中心に構成されています。これらを自分で組み合わせるのもよいですが、リタイアメントのターゲット年を選ぶだけで、アロケーションがすでに最適に組まれたパッケージの形で投資することができ、その後もリタイア年が近づくにつれて、されるべきリスクの低下調整が自動的にされるターゲット・デート・ファンドは心強いソリューションです。
さらにアメリカではここ10年くらいでターゲット・デート・ファンドも随分と発展してきました。経年のリスク調整の比率とタイミングも洗練され続け、さらには手数料も低下し続けました。良質なインデックスファンドで組んだ低手数料のターゲット・デート・ファンドほど便利なものはないように思います。
私のクライアントでも多くの方が資産運用に活用をしています。背景も資産状況も異なる方々がどのように取り入れたのかご紹介しますね。