働き盛りの30代、医師、IT勤務のミリオネア……それぞれのターゲット・デート・ファンド活用例
スチューデントローンの返済をしながら働いている30代の方がいらっしゃいました。「月々の支出がなかなか下げられず、401(k)になかなか貯められません」とのこと。「若いうちから、たとえ少なくてもいいので続けて貯めることが力を発揮します。月に50ドルでも100ドルでもいいので、コンスタントにターゲット・デート・ファンドに積み立て続けてみてください」と励まします。30代なら、多くのターゲット・デート・ファンドにおいて株式比率は90%レベルで組まれています。これから先10年ほどの40代までは、アグレッシブに全世界分散の株式投資で力強く増やしていき、その後だんだんとリスクを下げながらも、全世界分散をキープしたまま投資をし続けます。ただただ、この同じファンドに積み立て続ければよいという、大変シンプルな解ですが、大変力強い運用です。
一方で、年収100万ドルの50代のお医者様にもターゲット・デート・ファンドをお勧めしたことがあります。大学病院で、401(k)に似た確定拠出制度がいくつか併用できるように用意されていました。そのどれにも良質なターゲット・デート・ファンドが提供されていました。「個別のインデックスファンドを組み合わせて最適なポートフォリオを作ることもできます。その方が、パッケージとして提供されているターゲット・デート・ファンドより若干トータル手数料が低くなりますが、ただリタイアが近づくにつれてのリスク調整が必要です」とご説明すると、「いや、それはきっと忘れてしまうので、自動でやってくれるターゲット・デート・ファンドにします」と選択されました。
またこんな方もいらっしゃいました。大手IT企業にお勤めで、ストックオプションと持ち株制度の自社株だけで数百万ミリオンをお持ちの50代の方です。「自社株が大変好調できっとこれからも伸び続けると期待する一方で、でも、もしも株価が落ちたらリタイアメントはどうなるのだろうとも思う」とおっしゃいました。
どんな素晴らしい企業であっても、予想外あるいは不可抗力の事象で株価が暴落する可能性は排除できません。一社集中は大変な高リスク・高リターンであること、高リターンの裏側には高損失の可能性も隠れていることをご説明し、一定レベルでは自社株をキープしながらも、残りは順次計画的に売却し、少しずつインデックスファンドに乗り換え全世界分散をしていくことになりました。リタイアメントのみならず中期的資金ニーズもあったので、あえてターゲット・デート・ファンドにはしませんでしたが、投資するインデックスファンドは、ターゲット・デート・ファンドの構成要素として用いられている、基本的かつ低手数料のインデックスファンドです。
なお、この方も、自社株制度以外に会社の401(k)プランも参加されており、そちらはターゲット・デート・ファンドでの投資を選択されました。かなり十分なリタイアメント資産がおありなので、一般ケースに比してリスク許容度が高いことから、実際のリタイアメント予定は2030年でしたが敢えて2045年ファンドを選び、株式比率の高い期間を長く確保しました。ターゲット・デート・ファンドは、必ずリタイアメント年を選ばねばならないことはなく、少しリスクを高めにしたいとのであれば年号(=ターゲットイヤー)を上げることでの対応も可能です。