金融業界の急激な変化を象徴する「共通KPI」の誕生
ところで金融庁はなぜ、共通KPIの公表を金融機関に求めたのでしょうか。実はここ数年、金融業界ではさまざまな改革が進んでいて、その大きなきっかけとなったのが、2017年3月に金融庁が策定・公表した「顧客本位の業務運営に関する原則」でした。「顧客本位の業務運営」というと何だか難しい印象もありますが、要はもっとお客さまの目線に立った業務を行うべきだということです。
金融庁は各金融機関に原則の採択と、採択する場合にはそれを実現するための明確な方針の策定・公表を求めました。さらに取組状況を定期的に公表し、定着度合いを客観的に評価できるよう、何らかのKPIを設けることも働きかけたのです。
その結果、多くの金融機関が独自のKPIを設け、公表するようになったものの、今度はKPIが金融機関ごとに異なっていると、横比較がしにくいという声があがってきます。そこで、同じ基準で金融機関の比較ができるよう、金融庁が設定したのが共通KPIだったというわけです。
繰り返しとなりますが、この共通KPIの数字が全てではありません。それでも、金融機関を選択するための判断材料が増えることは、投資家にとってメリットが大きいのも間違いありません。さまざまな不祥事があったことから、最近は金融機関に向けられる目がますます厳しくなっていますが、一方で、この共通KPIに象徴されるように業界全体が変わろうと努力しているのも確かなのです。特に資産運用は長期で向き合う姿勢が大切ですから、そのパートナーとなる金融機関の選択は非常に重要です。今回の共通KPIの結果も参考にしつつ、長期にわたって付き合えるような金融機関をぜひ探してみてください。