厳しい環境下でも60%以上の顧客が利益を抱えていた上位3社

改めてランキングを見てみると、1位は静岡県に本店がある地方銀行のスルガ銀行で、64.6%の顧客が投資信託で含み益を抱えていることになります。2位は中堅証券の1つである丸三証券で64.2%、3位は第一生命保険で63.0%でした。一方で、メガバンクや大手証券、ネット証券などは1社もランク入りしていません。

ここで思い返していただきたいのは、2020年3月末というと、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で世界的に株式市場が大きく下落したタイミングだったこと。事実、上位にランキングされた金融機関も2019年3月末には全て70~80%台だったのが、軒並み低下しているのが分かります。ある一時点の数値だけではなく、その推移を継続的に見ていくことも大切になるわけです。こうした厳しい環境の中でも、スルガ銀行、丸三証券、第一生命保険は60%台に踏みとどまったわけですから、この3社が顧客にしっかり利益を提供できていたのは間違いありません。

ただし、今回ランク入りしなかった金融機関が駄目なのかと言えば、必ずしもそうではありません。金融機関の販売手法や顧客層によっても、この数値は異なってくる可能性があるからです。

例えば、すでに述べたようにネット証券は1社もベスト10に入らず、実際の数値も10~20%台と他の金融機関と比べてかなり低くなっています。とはいえ、これはネット証券の顧客に短期売買を好む層が多く、こちらも先述の通り、投資信託をすでに売却してしまった顧客は含まれないため、少なからぬ顧客が利益確定をしてしまった後の数字だとも考えられます。また、投資に積極的で、相対的に高いリスクを取っていた顧客が多いため、今回のような下落局面では損失を多く抱えてしまうといった側面もあるかもしれません。

だからこそ、この共通KPIの数字だけで金融機関を評価するわけにはいきませんが、上位に入った金融機関に利益を抱えている顧客が多いのは紛れもない事実。各金融機関のホームページには、この共通KPIの数値がより詳細に掲載されていたり、独自のKPIを公表したりしているケースもありますから、これから投資を始め、どこの金融機関を選択しようか迷っている人がいたら、参考材料の1つにしてください。