ポッドキャスト番組「投信フリーク」第13回は、『#13「AIは活用するけれど…」投資アイデアの仮説を持つためにプロが読んでいるものは』。

MCはファンドアナリスト海老澤界氏、ゲストに三菱UFJアセットマネジメント 株式運用部 エグゼクティブファンドマネジャー 小島直人氏を迎えてトークが展開されました(収録は7月10日)。

そんな#13の中から、本稿では『ファンドマネジャーはどうやって情報収集している?』に関するお二人のトークの一部を抜粋・再編集してお届けします。

 

 

 
(写真右から、小島直人氏、海老澤 界氏)
 

ゲスト:小島直人氏(三菱UFJアセットマネジメント 株式運用部 エグゼクティブファンドマネジャー)
1990年、山一證券入社、山一證券投資信託委託 委託調査部配属。素材業種等を中心にアナリスト業務に従事した後、ファンドマネジャー業務を担当。2005年三菱UFJ投信(現 三菱UFJアセットマネジメント)設立以降も国内株式の調査・運用を一貫して担当。2007年以降は国内株式アクティブ運用を中心にファンド運用業務を行う。2016年より日本株35を担当。

MC:海老澤 界氏(松井証券 シニアファンドアナリスト)
長年、投資信託について運用、販売、マーケティングなど多面的にウォッチ。投信アワードの企画・選定にもかかわる。

今と大違いの「IR情報」の取得方法

MCの海老澤 界氏(以下、E):日本株にまつわる情報取得も今と運用業界に入られた37年前ではまったく異なる状況ですよね。その頃ってどのように情報を取得されていたのでしょうか? とても気になっていました。

ゲスト 小島直人氏(以下、K):その頃、私は調査部に配属になり、素材関係の会社の担当になりました。やはり足で稼ぐことが重要ということで、企業訪問して、企業の方にお話を聞くことになります。
当然下調べのうえうかがうわけですが、当時は現在のように情報開示が充実していなかったのです。会社説明や決算説明資料、統合報告書もないですし、当時は単独決算が主体で、連結が補助のような位置づけで……今とは情報開示がまったく異なっていました。決算説明会といっても、短信が置いてあっただけという会社もあったと記憶しています。
(そんななかにあって)私は企業にお邪魔するときに、企業分析のために過去の決算短信を“ワン・ツー・スリー”を使ってストックしておくようにしていました……海老澤さんは「Lotus 1-2-3(ロータス ワン・ツー・スリー)」はご存じですか?

E:表計算ソフトですね?

K:そうです。あとワープロの「一太郎」というソフトも使って、過去の決算の数字を入力して、そのあと企業訪問をしていました。では、ここで海老澤さんにクイズです! 私が山一証券に入社した1990年はインターネットまだありません。スマホも当然ないです。その中で決算短信は、我々企業調査部に属した者はどうやって手にしたと思いますか? お考えください。

E:まったく想像つかないです……。でも決算短信がなければ話にはならないわけですよね。今だったらホームページのIRのコーナーに必ずありますが。「TDnet(適時開示情報伝達システム)」ももちろんない……これは足で稼ぐしかないということで、東京証券会館の下にあった図書館に行って、コピーして帰ってくる、でしょうか?

K:なるほど。でも不正解です。

E:なんでしょう、でもその頃の飛び道具的なメディアというとファックスぐらいですかね。

K:当時は電話とファックスが、空間を縮める大きな役割でしたね。では正解を言います! 私は当時山一證券投資信託委託に所属していたわけですが、山一證券の引受部に電話して、例えば「7203トヨタの短信をファックスしてください」とお願いして、ファックスを送ってもらい、それを1-2-3に入力して分析を始めていました。

やはり足で稼いだ情報は貴重―良質な情報から「自分なりの仮説を作る」

E:すごく貴重なお話をおうかがいできてよかったです。一次情報にたどり着く苦労が伝わります。それが今や簡単に手に入る、しかも(AI等を使えば)簡単に分析すらしてもらえる時代になって。
一方で、最近はSNS等で情報過多になっている……さらにAIは便利ではありますが、少し歪んだ形で情報が形成されているのではという危機感も私自身は持っています。今のSNSやAIは、ファンドマネジャーとして付き合い方をどう考えられてますか。

K:まず私自身はSNSをやっておらず、SNSから情報は取っていません。ただAIについては調べごとをするうえで便利なので、使っています。ただし、それをそのまま結論にしてしまうのは、「どうかな?」と私も思います。
AIはいろいろ事実を羅列して、割と“ポジ目線”の結論を出すことが多いと思います。でも、その事実が全部ポジティブなことは当然ないので、企業訪問の際は会社に、あるいは周りにそれが本当なのかどうかを確かめるのは重要ではないでしょうか。それで自分なりの仮説を作っていくのが非常に大切だと思います。
仮説を作るにあたっては、私は30数年前から調査部にいたこともあり、新聞も活用しています。「新聞は一次情報ではない」と思われるかもしれませんが、やはり新聞記事の特集記事は記者の方が足で稼いで、それで自分の意思を持って読者に自分の仮説を伝えようとしている記事が非常に多いと昔から思っていました。そして改めて、比べてみるとSNSは(情報収集のために見ようとすると)のっぺりとして、“目が滑ってしまう”感じもあって、何回も読み返さないと「事実って何だろう」と思ってしまいます。新聞記者の方が書いた特集記事は、成長市場分析を考えるにあたって非常に大きな材料として活用しています。

E:今、小島さんのお話を聞いて私自身すごくうれしかったんです。というのは、私の社会人の最初が専門紙だったんですね。やはり足で稼ぐよう言われて、それが目的化してしまっていた部分もありましたが、でもそれぐらいじゃないと本当の情報は手に入らない。

さきほどAIの出す回答はポジ目線というお話がありましたけど、AIは使う人を傷つけないような回答を出すところがあるので、そこを意識したうえで、ある意味ちょっとあまのじゃくになってモノを見るのはアクティブファンドマネジャーらしいと感じました。

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――そしてトークは、「投資を始める個人の方へアドバイス」「最近の日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)の比較についてお二人が思うこと」といったテーマへ。ぜひSpotifyなど音声プラットフォームから全編通してお聴きください。