投資信託を選ぶ際、各販売会社が自社のサイトで公開している「売れ筋ランキング」を確認する個人投資家は多い。そのランキングを定点観測して、トレンドを追う連載。今回は、三菱UFJ銀行。

三菱UFJ銀行の販売額(1カ月)ランキング2026年8月のトップは前月第2位だった「MUFGウェルス・インサイト・ファンド(標準型)」が上がった。第2位には前月第4位だった「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(愛称:オルカン)、第3位には前月第6位だった「MUFG ウェルス・インサイト・ファンド(積極型)」が上がり、前月トップだった「eMAXIS 日経225インデックス」は第4位にまで下がった。第6位には前月第9位だった「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」、第7位には前月第10位だった「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が上がった。

※三菱UFJ銀行のサイト内の投資信託検索サイト、「ファンドランキングから探す」の「販売額:1カ月」に基づき編集部作成。期間は2026年8月。
https://fs.bk.mufg.jp/webasp/mufg/fund/ranking/hanbaigaku_1m.html

「オルカン」とそん色ないリターンの「ウェルス・インサイト」

三菱UFJ銀行の8月の販売額(1カ月)ランキングで「MUFGウェルス・インサイト・ファンド(標準型)」(設定は三菱UFJアセットマネジメント)がトップに立った。「MUFGウェルス・インサイト・ファンド(積極型)」(同)も前月の第6位から第3位にジャンプアップしているため、8月の市場で目標リスク管理を行うバランス型の「MUFG ウェルス・インサイト・ファンド」が主力ファンドとしてクローズアップされたことが感じられる。同ファンドは、新興国を含む国内外の株式や債券に加え、内外のREIT(不動産投信)も含めて広く分散投資し、目標リスク水準の異なる3つのファンドから選択できるようになっている。「標準型」の目標リスク水準は年率10.0%程度、「積極型」は年率14.0%程度、「保守型」は年率6.0%程度だ。

バランス型ファンドは株式ファンドほど上昇率が大きくない。したがって、株式市場が順調に値上がりを続けるような市場の局面では値動きの悪い冴えないファンドに感じられて注目されなくなってしまう。しかし、株式市場の上昇力が衰え、あるいは、乱高下するような市場になると、株価の下落にストレートに連動しないバランス型の安定した値動きが魅力的に見えてくる。しかも、株式ファンドのリターンが衰えることで、パフォーマンスの違いが目立たなくなってくる。同じようなリターンの水準であれば、価格変動率が大きい株式ファンドより、安定的なバランス型が好まれるようになる。

実際に8月末時点で過去1年間のトータルリターンを比較してみると、「オルカン」(設定は三菱UFJアセット)が33.12%、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」(三菱UFJアセット)が30.44%に対し、「MUFGウェルス・インサイト・ファンド(積極型)」は29.53%とそん色のない水準で、「同(標準型)」も18.20%になっている。リスク(標準偏差)は「オルカン」が15.34、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は15.95と、「MUFGウェルス・インサイト・ファンド(積極型)」の14.01、「同(標準型)」の8.92より、当然ながら大きい。もちろん、3年、5年と長期の運用期間をとれば、現在の市場環境では株式ファンドのリターンが大きくなるのだが、過去1年のようにインフレが意識され経済成長率が鈍化するような局面では、株式ファンドと変わらないリターンをバランス型でも出すことができることが確認できる。

「MUFGウェルス・インサイト・ファンド」は、中長期の資産形成に活用するコアとなるファンドに位置付けられる。株式に単独で投資するファンドが、景気動向等によってパフォーマンスに良しあしが出てくることと比較して、幅広い資産に分散投資するバランス型ファンドは安定的なパフォーマンスが期待できる。一時期のパフォーマンスの不振によって投資をあきらめてしまうことなく、投資を継続することで結果的に大きな資産形成を実現することをめざす。三菱UFJ銀行では、2026年4月~5月、2025年6月~8月、2024年5月~6月など、比較的高頻度で「ウェルス・インサイト・ファンド」が売れ筋のトップを占めることがある。コア・ファンドとしての意識が強いファンドになっている。今回もトップの座を数カ月にわたって維持できるか注目したい。

「世界のベスト」など毎月分配にも根強い需要

売れ筋の第5位に「フィデリティ・グロース・オポチュニティファンド Dコース」(フィデリティ投信)、第6位に「世界のベスト(毎月決算型)」(インベスコ・アセット・マネジメント)がランクされている。実は、8月末時点で過去1年リターンを振り返ると「フィデリティ・グロース・オポチュニティファンド Dコース」は24.93%、「世界のベスト」は24.37%と「ウェルス・インサイト・ファンド(積極型)」の29.53%より劣っている。3年以上のリターンは「ウェルス・インサイト・ファンド(積極型)」を上回る成績を残しているが、足元の成績では苦戦していることがわかる。

それでもアクティブファンドへの注目度が高いのは、一つには中長期的なパフォーマンスでインデックスを上回る成績が期待できること。加えて、この2ファンドについてはファンドを保有したままで毎月分配金を得られるためだろう。「フィデリティ・グロース・オポチュニティファンド Dコース」は1万口当たり200円、または、300円の分配金の実績があり、「世界のベスト(毎月決算型)」は150円の分配金を継続している。基準価額の水準は両ファンドともに1万円前後で安定している。

分配金を払い出すタイプのファンドは資産形成には不向きだが、年金生活者など資産を活用しながら「年金+α」の収入を得て暮らしを少しでも豊かにしたいというニーズには合致している。まして、食料品の値上がりによって生活費の水準が上がっている昨今は、年金の受給だけでは生活が窮屈だと感じている高齢者は増えているだろう。安定的な分配金にもまた、安定的なリターンと同じくらいの需要があることがうかがえる。

執筆/ライター・記者 徳永 浩