投資信託を選ぶ際、各販売会社が自社のサイトで公開している「売れ筋ランキング」を確認する個人投資家は多い。そのランキングを定点観測して、トレンドを追う連載。今回は、三井住友銀行。
三井住友銀行の投信売れ筋ランキングの2026年8月のトップは、前月第2位だった「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」(愛称:世界のベスト)が上がった。前月トップだった「三井住友・225オープン」は第2位に下がった。第3位は前月と同じ「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」だったが、第4位には前月第6位だった「三井住友・NYダウ・ジョーンズ指数オープン(為替ヘッジなし)」が上がった。また、第7位に前月第10位だった「GSグローバル・パーシャルヘッジ社債ファンド」が上がり、トップ10圏外から第9位に「SMBC円資産ファンド」、第10位に「SMBC・DCインデックスファンド(MSCIコクサイ)」がランクインした。前月第4位だった「エス・ビー・日本株オープン225」、第9位だった「三井住友DS・FOLIO・AIマルチアセットファンド<フューチャーガイド>」はトップ10から落ちた。
※三井住友銀行サイトのファンドランキングから「販売額」「1カ月」に基づいて編集部作成。期間は2026年8月1日~8月31日。
https://fund.smbc.co.jp/smbchp/main/index.aspx?F=fnd_rank_sales_1m
パフォーマンスより「変化」を優先?
三井住友銀行の販売額ランキングは、「日経平均株価」連動型のインデックスファンドの人気が衰え、「三井住友・NYダウ・ジョーンズ指数オープン(為替ヘッジなし)」(設定は三井住友DSアセットマネジメント)や「SMBC・DCインデックスファンド(MSCIコクサイ)」(三井住友DSアセット)など外国株インデックスファンドが上昇した。「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」(三井住友DSアセット)や「三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド」(三井住友DSアセット)は前月順位をキープするなど、海外株インデックスファンドの人気が戻っている。
主要なインデックスファンドの8月1カ月間の基準価額の騰落率を調べると、「三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド」が3.62%高、「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」が3.31%高、「三井住友・225オープン」(三井住友DSアセット)が3.10%高、「SMBC・DCインデックスファンド(MSCIコクサイ)」が2.88%高、「三井住友・NYダウ・ジョーンズ指数オープン(為替ヘッジなし)」が2.21%高と続く。8月に順位を上げた「ダウ・ジョーンズ」や「MSCIコクサイ」が、「S&P500」や「日経225」よりも良い成績だったというわけではない。過去1年以上にわたって急速に価格が上昇した「日経225」、過去数年にわたって市場をリードしてきた「S&P500」には割高感が感じられるため、これまで人気が回っていなかった「ダウ・ジョーンズ」や「MSCIコクサイ」(日本を除く先進国株)に物色のホコ先が向かったということだろうか。
そもそも海外株への投資を考える場合、7月末に実施された日米協調した円買い介入(米国は円買い・ユーロ売りを実施したとみられている)は、「海外資産投資には不利」と意識される動きだったといえる。6月から7月にかけて1ドル=160円台に乗せ、163円台にまで円安が進んでいた。日米協調介入によって、為替市場には日本の円安阻止への意志が伝わり、その日本の姿勢を米国も承認しているという強いメッセージになった。これによって、日本の投資家にとって海外資産投資における「円安メリット」は期待できないことになったといえる。
2016年以降、約10年にわたって米国「S&P500」への投資が大きなリターンを生んできた背景は、米国株価の継続的な上昇(米ドルベースで2026年までの10年間で年率平均15%程度の上昇だった)に加え、1ドル110円前後から160円に進んだ円安・ドル高の上乗せリターン(年率平均4.5%程度)があった。日米協調介入によって1ドル=160円を超える円安については、政府・日銀が何が何でも阻止に動くのであれば、過去10年の米国株投資のうまみが大きくそがれることになる。ここに米国株に対する「AIバブル」懸念が加われば、「S&P500(あるいは、オルカン)」が最強などとのんきなことを言っていられなくなるだろう。これまで人気の外にあった「ダウ・ジョーンズ」や「MSCIコクサイ」がピックアップされたのは、「これまでと同じようにはいかない」と投資家が感じ取った変化を表しているのかもしれない。
「マグニフィセント・セブン」とは異なる選択肢
ランキングでトップに立った「世界のベスト」(インベスコ・アセット・マネジメント)こそ、「これまでとは同じではない」という投資家の思いをストレートに反映しているファンドといえる。これまでの市場は、「マグニフィセント・セブン(M7)」といわれた米国の超大型テクノロジー株が主導してきた。エヌビディア、マイクロソフト、アップル、アルファベット、アマゾン、メタ・プラットフォームズ、テスラの7社だが、たとえば、「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」に連動するインデックスファンドでは、2026年8月末時点でもテスラを除く6銘柄が組み入れ銘柄トップ10を占めている。「MSCIコクサイ」に連動するインデックスファンドであれば、テスラも含めて7銘柄がトップ10にそろっている。「S&P500」も7銘柄がそろっている。2018年1月にスタートした旧NISA(つみたてNISA)から、インデックスファンドの2大銘柄は「オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」(設定はいずれも三菱UFJアセットマネジメント)だったが、この2ファンドを動かしてきた主たる銘柄が「M7」だったと言っていい。
ところが、「世界のベスト」の組入上位10銘柄は「M7」ではマイクロソフトしか入っていない(2026年7月末時点)。そもそも米国の組入比率は46.2%で、「MSCIコクサイ」の75.5%とは大きく異なっている。「世界のベスト」の銘柄選定の基準は「成長」「配当」「割安」であり、「成長」が重視された「M7」は「配当」「割安」という基準でみると対象から外れてしまうのだろう。パフォーマンスだけをみれば、「世界のベスト」は8月に0.73%高でしかなく、「SMBC・DCインデックスファンド(MSCIコクサイ)」の2.88%高、「三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド」が3.62%高に遠く及ばないにもかかわらず、投資家の期待は一番高いという結果だった。投資家の意識は大きく変わってきているのかもしれない。
執筆/ライター・記者 徳永 浩

