「年金暮らしのジジイが偉そうに!」
まるで推理を披露する名探偵かのように敏雄が言うと、若い男は突然豹変し、大声で叫んだ。
「うるせえ、年金暮らしのジジイが偉そうに!」
そう言い捨てて、若い男は脱兎の勢いで逃げていった……。
それからさらに1週間が過ぎた。金曜日の夜。
スナック「シフォン」を訪れた敏雄は、幸せだった。時間は7時過ぎだったが、もう水割りは3杯目だった。常連客の高木さんや山下さんの姿もあった。
「敏雄さんが見つけてくれたから、あれ以来、嫌がらせはピッタリ止まったみたい。今回は本当に助けられたわね。今日は店のおごりだから、好きなだけ飲んでいってよ」
柏木ママが久しぶりに満面の笑みを浮かべている。
「結局、あの若い男は何者だったんだ?」
敏雄が一番聞きたかったことを聞いた。
「それが、お恥ずかしい話なんだけど、実は、うちの息子だったのよ」
「はあ、ママの息子さん?」
「いい年して、ちょっとマザコンぽいところがあってね。あたしがずっとスナックをやっているのが気にいらなかったみたい」
「でも、ネット上に悪口をばらまくのはやりすぎじゃないか?」
「そうすればお客が来なくなって、スナック経営を諦めると思ったみたい。店の前にゴミをばらまいたのも、そのためらしいわ」
ママの息子の心中は敏雄にははかりかねたが、とにかくスナック「シフォン」が元のような活気を取り戻したのは、喜ばしいことだった。
「とにかく、今日はとことん飲むぞ~!」
敏雄は4杯目の水割りを飲んだ。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
