<前編のあらすじ>

桂木圭介は大手不動産会社に勤める33歳の会社員。タワマン生活に憧れたあまり、自分でもタワマンに住むようになった。

会社まで徒歩圏内で、眺めもいいタワマンの暮らしに満足していたある日、エレベーターに乗り合わせた男性から、マスクをしていないことを注意されてしまう。

桂木圭介が反論したせいで、男性は激高し、暴言を吐いて去っていった。

憤懣やる方ない桂木圭介だったが、その後も男性からの嫌がらせに直面することになった……。

●前編:【「低層階の奴はマスクしないのか?」タワマンのエレベーター内でせき込んだ33歳男性に「高層階のマスク男」が放った暴言】

「偏った思想の持ち主なんじゃないですかね」

その日の午後1時。会社に出社したあとも桂木圭介の怒りは収まらなかった。午前中は事務作業だったので何とかなったが、もしミーティングが入っていたら不機嫌をまき散らしてしまっていただろう。

圭介は気分転換に後輩の古村翔太を誘いランチに出ることにした。

注文したパスタが来るまでの間、桂木圭介は朝の出来事について洗いざらいぶちまけていた。

「マスクをしろって、怒鳴り散らされたんですか?」

古村は苦笑いしていたが、それでも圭介の怒りには共感を示してくれた。

「そんなことでケンカを売られるのはおかしいですよねえ。インフルが流行っている時期ならまだわかりますが、今はそういう時期じゃないですし」

「それな」桂木圭介は思い出してイライラするのか、ずっと指先でテーブルをこつこつ叩いていた。

「ちょっと偏った思想の持ち主なんじゃないですかね。その高層階のマスク男。コロナの時ってひどかったじゃないですか。マスクを忘れると人から注意されたりしたし」

「そういう雰囲気ではあったかな」圭介はため息をつきながら答えた。

「こういうのってエスカレートしそうですし、一応、マンションの管理組合とかに報告したらどうですか?」

「そうだな」

桂木圭介はうなずくと、ちょうどテーブルに運ばれてきたパスタを食べ始めた。