<前編のあらすじ>

72歳の高柳敏雄は長年市役所に務めていたが、定年退職してから、再雇用先の会社も辞めてしまい、いまは年金で暮らしている。

独身で寂しい老後の慰めとして、週一回だけ最寄り駅の駅前にあるカラオケスナック「シフォン」に通っていた。

しかし、ある日敏雄が「シフォン」を訪れると、客足が遠のき、人気のなくなった「シフォン」の光景に驚く。

「シフォン」のママ、柏木佐智子によると、「何者かに嫌がらせを受けていて、ネット上にスナックの悪口を書き込まれた」という。

一人、憤りを覚える敏雄は、犯人探しを心に誓ったのだが……。

●前編:【「年金暮らしの老人がバカ騒ぎしている店」ネット上に悪口を書かれたスナックのママのために72歳常連客が誓った「犯人探し」】

犯人は近所の人間に違いない

スナック「シフォン」の悪口を、誰かがネット上にばらまいている。そのせいで客足が遠のき、「シフォン」は存亡の危機……。

高柳敏雄がその話を聞いてから一週間が経った。

あれ以来、敏雄はそれとなく犯人探しを始めていた。悪い口コミをばらまいているのは、きっと近所の人間に違いない。そう目星を付けた敏雄は、家の周りや、駅周辺を歩いて、怪しい人物がいないか探した。だが、犯人を見つけることはできなかった。

そうこうしているうちに、翌週の火曜日がやってきた。いつも敏雄が「シフォン」に出向く曜日だ。

それまで毎週火曜日が楽しみで仕方がなかったが、あれ以来、楽しみが半減してしまっていた。常連客が減り、ママも機嫌が悪いので、「シフォン」で過ごすせっかくの時間が味気無いものに感じる。

「でも行かないと、ママがもっと悲しむしなあ……」

敏雄は重い腰をあげると、自宅を出て、徒歩で駅前の「シフォン」に向かう。

敏雄の自宅から、最寄り駅の駅前にある「シフォン」までは、歩いてものの十五分ほどだ。程なくして、ベージュ色の壁に、真っ白な看板がまぶしい、スナック「シフォン」の姿が目に入る。

と、その瞬間だった。

「あ、あれは……」

全く予想もしていない光景に、敏雄は目を見張った。