結衣が選んだ新しい関係

午後、幼稚園の門の前で、結衣は心春を待っていた。冷たい空気の中、少し離れたところで聖来がやってきた。

目が合ったので、結衣は軽く会釈をした。だが、以前のように歩み寄っていくことはしない。できることならもうあまり関わりたくないと思った。

隣に立った佐伯さんが、「この前は、ありがとうね」と言った。

「割り勘のこと、言い出してくれて助かりました」

「当然のことだよ。あんなに用意してくれてたんだし」

当たり前のように言われて、結衣は小さく笑う。

「それにしても、聖来さんだいぶひどかったよね。手土産もないし、割り勘のときなんか、1人でとぼけちゃってさ」

「うん、ちょっとね……」

言葉を濁しはしたものの、佐伯さんにそう言ってもらえてほっとしている自分がいた。

そのとき、門から心春たちが飛び出してきた。

「ママー!」

門の方から弾む声が重なって、色とりどりの上着がいっせいに揺れた。走ってきた心春の手を取ると、手袋越しにも小さな温かさが伝わる。園庭には子どもたちの足跡が交差し、午後の光が淡く降り注いでいた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。