噛み合わない協議に疲労困憊

さらに、後見人が決まったら決まったで、その後も難題が待ち受けていました。後見人に選ばれたのは後見経験が豊富な弁護士さんでしたが、とにかく、我が家の税理士さんと話が噛み合わないのです。

税理士さんは投資先のマーケットを見ながら納税負担も軽くする“我が家の利益の最大化”を図るための提案をしてくれます。それに対し、後見人の弁護士さんが重視するのは“被後見人の祖母の利益”ですから、主張が異なるのは当然と言えば当然かもしれません。

交渉と妥協を繰り返しながら何とか祖父の相続税の申告と納税を終えたのは、本当に期限ぎりぎりでした。叔母は「私はお金のことはよく分からないから」と高みの見物でしたが、「家の財産を人任せにできない」と極力話し合いに参加した父や私は疲労困憊しました。

一段落したと言っても、現行制度だと一度決まった後見人は祖母が亡くなるまで後見する形になるようで、この先の弁護士さんとのやり取りが思いやられます。

「大奥さんくらいの年代の方だと、見た目は元気であっても認知症リスクは常につきまといます。自由奔放な大旦那さんに強く言えない私も悪かったのですが、やはり、大旦那さんに遺言書を書いてもらって、旦那さんや娘さん、お孫さんに財産の名義を分散しておくべきでした。そうすれば、それぞれの持ち分を売却したり、持ち分を担保に融資が受けられたりできたわけですから」

一切合切の手続きを終えた後に税理士さんからそう言われましたが、まさに“後の祭り”です。これから祖母、父、母と3人の相続人になる私は、「もっと相続のことを勉強して、しっかり準備をしておかなければ」と肝に銘じた次第です。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。