頭脳明晰だった祖母に異変…税理士が提案したこと
江戸っ子できっぷがよく年齢を重ねても頭脳明晰だった祖母は、私たち家族や職人さんたちのゴッドマザー的な存在。祖母ならきっと、税理士さんと相談の上で最適解に導いてくれる。父や叔母、私にはそんな期待もありました。
ところが、合意からしばらくして当の祖母が脳梗塞で倒れてしまったのです。幸い、命に別状はありませんでしたが、病院のベッドの上で意識を取り戻した祖母は、以前の祖母とは別人のようになっていました。
血管性認知症というのだそうですが、脳の血管が詰まったことで脳細胞が損傷を受け、一気に認知障害が進んでしまったのです。見舞いに来てくれた税理士さんからは「これほどとは思わなかった。大旦那さんの相続の手続きを進めるには成年後見制度を利用する必要があるかもしれませんね」と言われました。
やむなく成年後見人への申し立てを行うが…
成年後見制度とは、認知症などで判断能力が十分でない人が法的行為や意思決定を行うのをサポートする制度です。家庭裁判所が選任した成年後見人が被後見人に代わってこれらの行為を行い、被後見人の財産や利益を守っていく形です。
相続で相続人の1人が祖母のように判断能力が低下し適切な判断が難しくなった場合、他の相続人が勝手に相続財産を動かすわけにはいきません。納税資金を作るために祖父の資産の一部を売却するなら、祖母に成年後見人を立てなければならないというわけです。
父は成年後見人に対して、あまりいい印象を持っていないようでした。制度を利用している近所の方から、「被後見人名義の通帳を全部持っていかれてしまった」「経営しているアパートの修繕もさせてもらえない」といった愚痴を聞かされていたからです。
家族が後見人になるケースもなくはないそうですが、税理士さんの話だと、「大奥さんは管理する金額が大きいので、弁護士や司法書士などの“プロ後見人”が選任される可能性が高いと思う」とのことでした。祖母の財産の規模だと、月額5万~6万円の基本報酬がかかるようです。
やむなく父が書類を備えて家庭裁判所に申し立てをしましたが、実際に選任されるまで4カ月もかかったのには閉口しました。
成年後見制度を利用する場合、通常は相続発生から10カ月という相続税の申告期限は「後見人が相続の開始を知った時から起算する」ことになりますが、祖母が管理する祖父の遺産にはマンションの管理費や修繕積立代といったランニングコストがバカにならないものが多く、選任を待っていた4カ月の間もしっかり引き落とされていました。
