経常利益上方修正期待は「鉱・採石・砂利採取」「食料品」「金属製品」

続いて、9月短観の経常利益計画から上方修正が期待される業種を見通してみよう(資料3)。結果を見ると、増益計画となる中で上方修正率が最も大きいのは「鉱・採石・砂利採取」となっている。これは、排ガスの浄化触媒やAIサーバー向けの銅箔などといった機能材料が好調であることが反映されたと推察される。

 

 

それに続くのが「食料品」である。背景には、値上げや好調な輸出が寄与していることが推察される。そして「金属製品」と「化学」については、こちらも鉱業と同様に半導体材料の好調さが上方修正の後ろ盾になっている可能性がある。

なお、「宿泊・飲食サービス」は売上高計画も上方修正となっていることから、万博やインバウンドに伴う需要増や値上げが寄与していることが予想される。

このように、次の四半期決算で経常利益見通しの上方修正が期待される業種としては、半導体材料の好調さが寄与する鉱業や金属製品、化学に加え、値上げや需要増が功奏する食料品や宿泊・飲食サービス関連業種等が指摘できる。

為替レートの変動で業績が修正される可能性も

なお、9月短観の収益計画では、企業の想定為替レートも公表されることから、業種別の想定為替レートも今後の業績見通しの修正の可能性を読み解く手がかりとして注目したい。

資料4にて実際に今年度の想定為替レートを確認すると、ドル円で145.9円/$、ユーロ円で159.7円/€となっている。対して、足元のドル円レートは140円台後半、ユーロ円レートは170円台となっている。

 

 

中でも、足元のレートよりも特に円高で今期の為替レートを想定しているのが「造船・重機、その他輸送用機械」「はん用機械」「繊維」「電気機械」「窯業・土石」となっている。

なお、輸入依存度の高い内需関連産業は円高でむしろ業績の押上要因となる企業も含まれており注意が必要だが、多くの業種において足元の水準より、特に対ユーロで円高気味の想定をしていることに注目すべきだろう。

以上の結果を踏まえれば、ユーロ圏向けのエクスポージャーが高水準の業種においては業績上方修正が期待される一方、今後は世界経済において想定以上の景気減速懸念などに伴うリスクオフを通じて、各国中銀がこれまでよりも金融緩和に前向きな姿勢を示す等して為替レートの水準が円高方向に進めば、今期の為替レートを円安気味に想定している業種に属する企業を中心に今期業績が修正される可能性があることにも注目すべきだろう。