追加予定の一部には疑問…?

それと共に、異を唱えたいのが追加予定ファンドです。仮に目算どおりに9本を除外できたとしたら、それに代わって別なファンドが追加されますが、そのラインナップがどうにも納得できないのです。

まず選定基準です。除外ファンドは前述したように、「5年ファンドスコアの24カ月ローリング平均値が2.5未満」で機械的に切られていますが、追加予定ファンドにはこの手の定量評価による選定基準が設けられていないようなのです。

それを証拠に今回、追加予定に入っている9本のファンドのうち、5年を超えるトラックレコードを持っているのは、たったの2本しかないのです。

もちろんインデックス型であれば、トラックレコードが5年に満たないとしても、連動目標であるインデックスに対してリターンがほぼ連動していれば、とりあえずのところは容認できます。なぜなら、連動目標であるインデックスの長期トラックレコードを見れば、リスク・リターンの度合いをおおよそ把握できるからです。

しかし、採用予定である9本のファンドの中には、アクティブ型も存在しています。アクティブ型の場合、できれば5~10年程度のトラックレコードをベースにして、運用の良し悪しを判断したいところなので、たとえば「なかの日本成長ファンド」のように、1年半程度のトラックレコードしか持っていないファンドを採用予定のラインナップに入れるのは、どう考えても納得できません。

追加予定の理由についても、どこまでしっかりリサーチしたのか、不明なものもあります。

たとえば今回、楽天投信投資顧問が運用する「楽天・高配当株式・日本ファンド(資産成長型)」が、追加予定ファンドに含まれていますが、その選定理由は「高配当日本株への長期投資要望が多く、同種の商品がラインナップに存在しなかったため」ということでした。

しかし、楽天証券が取り扱っているファンドのなかには、高配当日本株を主要投資対象とするものが他にもあります。

たとえば三菱UFJアセットマネジメントが設定・運用する「日経平均高配当利回り株ファンド」は、7年弱のトラックレコードを持っていて、その純資産総額は1958億4600万円です。かつ設定来の運用実績を見ると、楽天証券の分類平均である110.52%に対し、同ファンドの分配金込みリターンは151.27%です。

これだけ優れたリターンを実現しているファンドが、楽天証券の取扱ラインナップにあるにもかかわらず、設定されたばかりで全くトラックレコードがなく、純資産総額もたったの3億2300万円しかない「楽天・高配当株式・日本ファンド(資産成長型)」を、追加予定候補に加えたのでしょうか。

また、iDeCoは長期運用が前提になりますが、投資信託には「繰上償還条項」があり、それに定められた一定水準を割り込むと、運用期間がそれ以上に残っていたとしても、強制的に償還されるケースがあります。

たとえば「楽天・高配当株式・日本ファンド(資産成長型)」の繰上償還条項のひとつには、「受益権口数が10億口を下回った場合」に繰上償還を検討すると目論見書にありますが、設定から間もないとはいえ、同ファンドの受益権口数は、9月29日時点で3億口に満たない状態にあります。同ファンド以外にも、「楽天・オールカントリー株式(除く日本)インデックス・ファンド」、「楽天・エマージング株式インデックス・ファンド」のいずれもが、受益権口数が10億口を下回った時点で繰上償還を検討するとなっているにもかかわらず、現時点において、それを大きく下回る受益権口数しか持ち合わせていません。このようなファンドを、長期投資を前提にしたiDeCoの採用候補にしても良いのでしょうか。

なかには、運用開始から1年半程度のものも…

このように考えていくと、ますます納得できないのが、なかのアセットマネジメントが運用する「なかの日本成長ファンド」が、どうして採用予定候補に入ったのか、ということです。

これは他メディアでも指摘したことですが、同ファンドはアクティブ型であるにもかかわらず、まだ1年半弱のトラックレコードしか持ち合わせておらず、辛うじて評価対象となっている1年の楽天ファンドスコアでも、「1」という最低スコアしか得られていません。設定来のリターンも、参考指標となる配当込みTOPIXに対して10%超負けています。

もっといえば、運用しているなかのアセットマネジメントに資金が集まっておらず、先般公表された2025年3月期決算は2億8706万9000円の赤字であり、創業来の累積赤字は3億6524万1000円です。2025年3月末時点で同社が保有している純資産合計が8億1725万8000円ですから、このまま増資を受けられず、かつ赤字がかさむと、運用会社自体の経営が危ぶまれてきます。

こんなファンドまで追加予定候補にしてしまっている楽天iDeCoは、一体どのような基準でデューデリジェンスを行ったのでしょうか。楽天証券は今一度、iDeCo加入者向けに追加予定候補ファンドの設定基準について、しっかり説明する必要があると考えます。