「今のおトク感」を取った先に待ち受けるのは…
一方で、ふるさと納税のひずみも出てきました。ふるさと納税とは、有り体に言ってしまえば、自分が欲しい返礼品がもらえる自治体に寄附し、所得税の払い戻しや自分が住んでいる自治体に納めている住民税を控除してもらう制度です。
「自分が住んでいる自治体に納めている住民税が控除される」ということは、自分自身は現在、住んでいる自治体から各種サービスを受けているにもかかわらず、住民税を納めていないことになります。つまり住民税が減ってしまうのです。これは自治体によっては、住民サービスの低下を引き起こす恐れにつながります。
もちろん、住んでいる自治体が地方交付税の交付団体であれば、減った住民税の一定程度は、地方交付税交付金という形で国から補塡(ほてん)されます。しかし、問題は不交付団体の自治体です。東京都をはじめとして、83団体が不交付団体となっています。
特に東京都は減収額が大きく、2025年度の減収額は2161億円。ふるさと納税が始まってからの減収額累計は1兆1593億円にものぼります。このうち都民税分の減収分は862億円で、これは特別養護老人ホームの施設整備費補助の約70施設分に相当するというのが、東京都主税局のデータに示されています。
東京都で生活している人たちもいずれ高齢化していきます。その時、住民サービスが低下していたら、どうなるでしょうか。今の欲望、おトク感を満たすために、将来の保障を食いつぶすようなことがあっては、それこそ本末転倒です。今回のポイント付与禁止と同様に、「おトクなふるさと納税」は徐々に縮小へと向かうように思われます。