そもそも「ふるさと納税」とは、何のための制度だったか

1兆円市場になりつつある「ふるさと納税」に対する規制の網が、広がりつつあります。総務省が6月28日に、「寄付に伴いポイント等の付与を行う者を通じた募集を2025年10月1日から禁止する」と告示したのです。

これに対して、会員を対象に寄付金額に応じたポイント付与を行っていた楽天は、ポイント付与禁止に反対する署名活動を展開し、7月8日時点で100万件が集まったことを発表しました。ポイントを用いて楽天経済圏を形成している楽天にとって、1兆円市場のふるさと納税における優位性が揺らぎつつあるのですから、反対するのは当然でしょう。

ふるさと納税がスタートしたのは2008年ですから、かれこれ16年が経過しようとしています。

この制度は、若者層の地方から大都市圏への人口移動に伴って生じる、ある種の不条理を多少なりとも解消することを意図して設けられました。

人口集積地である大都市圏には、地方で生まれ育った若い人たちが少なからず生活していますが、大学に入学するまで地元の住民サービスを受けて育ちながら、大学への入学や就職を機に大都市圏に移り住み、そこで納税されてしまうと、子供が育つまでの間、税収を使ってさまざまな住民サービスを提供してきた地方自治体は、これまでかけてきたコストを回収できなくなってしまいます。その不公平を是正するために設けられたのが、ふるさと納税です。

簡単にふるさと納税の仕組みを説明しておきましょう。目的は前述したように、大都市圏と地方の不公平感を是正することです。

「納税」という言葉を用いてはいますが、実態は「寄付」です。寄付という形を用いて、自分自身の故郷や応援したいと思える自治体など、自分の好きな納税先を選んで納税できる制度です。2000円だけは自己負担しなければなりませんが、それを除いた寄付金全額が、ふるさと納税を行った年の所得税と、その翌年度の住民税から控除されます。かつ、寄付先の自治体からは、寄付金額の3割に相当する返礼品を受け取ることができます。

たとえば5万円をふるさと納税したとしましょう。この場合、5万円から自己負担額である2000円を差し引いた4万8000円が所得税および住民税から控除され、かつ5万円の3割に相当する1万5000円相当の返礼品を、自治体から受け取ることができます。

考え方にもよりますが、もともと自分が今、住んでいるところに納めるべき税金を、自分の意思で選んだ好きな自治体に納税でき、かつ前出の5万円のケースで言えば、2000円の自己負担によって1万5000円の返礼品を受け取れるという点で、おトク感があるのは事実でしょう。