ふるさと納税の仲介は“おいしい”ビジネス?
ただ、民間事業者に頼る部分が大きくなればなるほど、集めた寄付金のうち、地方自治体に必要な事業に回せる真水の部分は圧縮されてしまいます。そのため2023年10月から総務省は、「寄付額に占める経費の割合を5割以内に納めること」を要請しました。これはつまり、仲介サイトをはじめとして、各種中間管理業務にかかる外部委託会社への委託手数料や、返礼品の送料といった経費が、寄付金の5割を超える地方自治体が結構多いことを意味します。
逆に言えば、それだけ民間事業者としては利益を得るチャンスがあることになります。ちなみに地方自治体が仲介サイトに登録するだけで、寄付金の10%程度の手数料が、仲介サイトに支払われていると言われています。前述したように、寄付金額が1兆円だとすると、その10%ですから、仲介サイトの運営事業者だけで1000億円ものマーケットが、ふるさと納税によって生まれたことになります。
当然、民間事業者は利益が出てナンボですから、仲介サイトの運営事業者としては、ひとつでも多くの地方自治体に登録してもらいたいわけです。その行き過ぎたケースが、冒頭でも触れた、寄付金に対するポイント付与です。
楽天の三木谷会長は、総務省のポイント付与禁止の告示に対し、「民間原資のポイントまでも禁止し……」と非難し、ポイントは楽天がその原資を負担していることを明言しましたが、これは多少、自分の懐を痛めてポイントを付与しても、寄付金から得られる手数料にうまみがあるということです。
計算してみましょう。楽天のふるさと納税は100円につき1ポイントが付与され、1ポイントは1円と等価です。
仮に楽天のふるさと納税に登録している地方自治体が、1億円を集めたとすると、100円につき1ポイントですから、楽天の負担は100万ポイント(=100万円)です。対して、楽天のサイトを通じて1億円を集めたとすると、地方自治体は楽天に対して、その10%に相当する1000万円を、手数料として支払うことになります。
つまり楽天のふるさと納税は、100万円のコストをかけて1000万円の売上を得ることになります。
もちろん、楽天としては仲介サイトの運営に際して、さまざまなコストがかかりますから、差額の900万円がまるまる利益になるわけではありませんが、それなりに実入りの良い商売なのかもしれません。
そう考えると、反対署名を集めたくなる気持ちも分からないではありませんが、ポイント獲得と、少しでもおいしい返礼品を得ることが目的化したふるさと納税は、当初思い描いた制度設計から、相当かけ離れたものになりつつあるのは事実です。