多くの人は賃金上昇に懐疑的?
「5年後の給与所得はどの程度になると思うか」という質問に対しては、全体の38.6%が「変わらない」と回答している。これは定期昇給を含めての回答となり、先行き5年間で賃金が変わらないと考えている人が4割と主流を占めていることを意味する。
年齢階級別の収入増加予想
出所 内閣府「令和7年度年次経済財政報告」
年代別に見ていくと、「変わらない」「低下する」との回答が6割近くを占めるのが50代だ。一般的には定年に近づくほど先行きの賃金水準が低下する傾向にあるが、その実感が反映されているのかもしれない。
一方で今後、一定程度の昇給が期待されるであろう20 代、30 代は「上昇する」との回答 が4~6割程度と高いものの、3~4割程度が「変わらない」、1割ほどは「低下する」と 答えている。
なお20 代、30 代については同居の親などが世帯主として回答している可能性がある。そのため世帯主だけに絞った回答を見ると、20 代、30 代の「変わらない」は3割程度、「低下する」は1割以下へと低下する。一方で「上昇する」は6割台に上がるものの、「10%以上の上昇」を想定するのは2割程度と、世帯主以外を含むケースとさほど変わらない。
なお10%以上の上昇というと非常に高いイメージがあるが、春闘の賃上げ率(定期昇給を含むベース、連合集計) で見ると22~24 年の3年間で実現されている水準だ。現状の賃上げペースを前提とすれば5年間で 10%以上上昇という見通しは必ずしも非現実的なものともいえないだろう。
逆にいえば比較的若い層においても、今後5年間で年2%程度以上のペースの賃上げが続き、5年後には今より10%以上上昇していると想定するのは全体の2割程度にとどまっており、持続的な賃金上昇に確信を持てていないという結果が出ている。賃金の据置きを想定するという意味でのデフレマインドが依然として一定程度、染み付いている様子がうかがえる。
消費の回復には給与アップだけでなく、社会保障の充実や雇用の安定、そして何より継続的な所得増加への期待感が必要であることが回答結果からは見えてきた。短期的なボーナスアップよりも長期的に安定した給与増加を実感できる環境づくりが消費を本格的に回復させる鍵となりそうだ。
●持続的な賃金上昇は継続するのか? 企業の意向とは…後編「「5年後の給与はどうなる…」新卒給与30万円超の羨望も、“賃金が増える”と考える若者ばかりなのか?」にて詳報する。
調査概要 白書名:「令和7年度年次経済財政報告」 調査主体:内閣府 公表日:2025年7月29日