「給与所得の増加」が突出して高い消費拡大の条件
どのようなきっかけがあれば私たちは消費を増やすのだろうか。内閣府の最新調査※によると、「給与所得の増加」との回答が7割近くに上り、他の選択肢と比べても突出して高くなっている。この傾向は2019年に行った調査でも同様であり、賃金の増加が消費の増加に極めて重要であることが改めて明らかになった。
※内閣府「令和7年度年次経済財政報告」(2025年7月29日公表)
消費を増やす環境変化
しかし年代別に見ると興味深い結果が浮かび上がる。若年層では給与所得の増加を消費拡大の条件として挙げる割合は6年前と比べて減少しているが、一方で50代では横ばい、60代では増加しているのだ。
若者は給与が増えても消費しない?
なぜ若い層は、消費拡大において給与所得の増加を重視しなくなっているのか。20代を見ると、6年前の約80%から直近調査では20ポイントほど低い60%弱に下落している。背景には近年の賃上げの影響がありそうだ。23年以降、若年層の賃金上昇率が他の年代に比べて相対的に高く推移している。そのため給与増が必ずしも消費に結びつくとの発想ではなくなっている可能性がある。
消費を増やす環境変化
一方で年代が上がるにつれ、給与所得が生活設計上で重要な意味を持つようになっているようだ。雇用延長や定年年齢の引き上げなど、「長く働く」ための制度や環境の整備が進んでいる。給与増に伴い消費を増やす意向は特に60代が顕著で、6年前の約40%から60%弱に20ポイントほど上昇している。
また、「社会保障の充実」と「雇用の安定」については、19年時点に比べて全年代で回答割合が一定程度高まっている。これらが実現されれば消費を増やすとの回答が増えている背景には、老後への不安を含め将来の不確実性への懸念が高まっている可能性が考えられる。
一方、「必要となる教育費の低下」という回答は30代、40代を中心に下がっている。少子化の進行に加え、幼児教育・保育の無償化や高等学校等就学支援金の拡充(私立高校授業料実質無償化)などの支援策の影響も考えられる。