生産性が上がっても実質賃金は横ばい
成長戦略ではなく、所得再分配が優先課題というと、驚く人もいるかもしれませんが、まず図1-1を見ていただきたいと思います。1998年を100として、日本の時間当たりの生産性と時間当たりの実質賃金の推移が描かれています。1998年から2023年までの間に、生産性は累計で30%ほど上昇していますが、実質賃金は横ばいのままです。いや、正確には2021年以降のインフレの影響もあって、1998年対比で2023年の実質賃金は3%程度減少しています。
ここで釘を刺しておきますが、2023年春闘から高めの賃上げが始まり、2024年春闘も高い賃上げになったのだから、この問題は既にケリが付いたなどと、考えてはいけないと思います。物価高に賃上げは全く追いついておらず、2024年半ばまでの3年間、実質賃金は減少が続きました。2024年夏頃に、ようやく下げ止まってきたところであって、ここからは、これまでの穴埋めが必要です。2025年以降の春闘でも、高めの賃上げを続けてもらわなければ、減少を取り返せません。
日本経済の死角——収奪的システムを解き明かす
著者名 河野龍太郎
発行元 ちくま新書
価格 1034円(税込)