各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、松井証券のデータをもとに解説。
松井証券の投信売れ筋ランキングの2025年10月のトップ2は前月同様に「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」(愛称:世界のベスト)、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(愛称:オルカン)だった。第3位には前月第7位から「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」がジャンプアップし、第4位には前月第5位だった「iFreeNEXT FANG+インデックス」があがった。そして、第6位にはトップ10圏外から「eMAXIS NASDAQ100」がランクインするなど、米国株式関係のインデックスファンドが人気を集めた。一方、第6位だった「三菱UFJ純金ファンド」は第8位に、第3位だった「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」は第10位に後退するなど、純金(ゴールド)関連ファンドは人気が衰えた。
上伸した「米国株」と急落した「ゴールド」
松井証券の売れ筋トップ10でランキング順位を上げた米国株式インデックスファンドは、10月の株式市場の動きをストレートに反映したものだろう。10月の米国株式市場は、「S&P500」(指数)が2.27%上昇で5月以来6カ月連続の上昇を記録。この間の上昇率は22.83%だった。また、「NASDAQ総合」も10月に4.70%上昇し、4月以来7カ月連続の上昇(上昇率は37.14%)を記録している。このような月次の騰落率の記録は、たとえば、英国「FTSE100」が5カ月連続の上昇で上昇率は10.92%だったことなどと比較すると米国株の強さがわかる。
もっとも、国内株インデックスは7カ月連続で上昇し、「TOPIX」の上昇率は25.32%、「日経平均株価」は47.15%と米国株を上回る上昇率だった。しかし、残念ながらトップ10に国内株インデックスは入っていない。その点では、投信市場の売れ筋は、足元のパフォーマンスを評価するより、過去1年~2年など比較的長い期間のパフォーマンスの評価を反映する傾向がある。
2018年に「つみたてNISA」(旧制度)がスタートし、インデックスファンド・ブームが盛り上がる中、米国株式市場の上昇と円安傾向が重なって「資産形成で投資信託に投資するなら外国株式ファンド」という強い印象が定着している。しかし、常に勝ち続ける資産などない。短期の値動きに右往左往することは避けたいが、国内株式に対する国内投資家の評価は低すぎるように感じられる。
一方、10月にランキングを落とした純金(ゴールド)関連ファンドは、10月まで続いた急速な価格上昇に続いて10月後半にあった価格の落ち込みによって目先の利益を確定する売り(解約)がかさんだのではないかと考えられる。それだけ純金(ゴールド)価格の上昇率は大きいものだった。NY金先物価格は10月20日に4359.4ドルの史上最高値を付けた後、10月28日には3983.1ドルの安値に沈んだ。わずか6営業日で8.63%下落したことになる。また、純金(ゴールド)は債券の利子や株式の配当などのインカム収益を生まない資産であるため、長期投資の対象というより短期の値ざや取りをめざす投機的な資金を呼び込みやすいという側面もあるのだろう。


