投機筋のポジションの動向
この要因として投機筋のポジションが挙げられます。ヘッジファンドなどが含まれるレバレッジドファンド勢は7月中旬以降に円ショートを拡大させてきました。今回のパウエル議長の講演を受け、こうした円ショートの手仕舞い、すなわち円の買い戻しがドル円を押し下げたと考えられます。従って、こうした動きが一巡した後の来週のドル円はやや持ち直す可能性が高いと言えるでしょう(5ページ)。

実際、雇用統計が発表された8月1日の終値と比較した主要通貨の対ドル変化率をみると、円は全体の中盤に位置しているに過ぎません。ドルに対しても0.4%程度上昇したに過ぎず、足元で円高が進んでいるわけではありません(6ページ)。

先週の動画で要注意とお伝えした日本の消費者物価指数も振り返っておきましょう。総合および生鮮食品を除いたベースのインフレ率の伸びは低下しました。一方、食品とエネルギーを除いたインフレ率は前月から横ばいとなっており、依然としてインフレ圧力の継続が認められます。前月比の伸びは0.1%のプラスにとどまり、足元のインフレには減衰の兆しもみられていますが、それでも市場では日銀の年内利上げに対する織り込みが69%から72%までわずかながらも上昇しました。
ただ、発表された金曜日の時間帯は、アメリカの利下げ観測後退によるドル買い地合いだっただけに、完全にかき消された結果となりました(7ページ)。
