副業・兼業が難しい人の3つの特徴

ここまでの流れだけからは、ミドル・シニアにとって、副業・兼業はまさに救世主のように見えます。しかし、若年層(20〜30代)の実施率がやや高く、職位別に見ると「部長・本部長相当」の副業実施率が高いというデータもあるように3、セカンドキャリアにとって一番必要だと思われる、ミドル・シニア世代や、経営層への登用の可能性が低い層でチャレンジをしている人の実施率が少ない点は残念なところです(図表1‐18)。

3 パーソル総合研究所「第三回副業の実態・意識に関する定量調査」(2023年)

 

では、なぜミドル・シニア世代では副業・兼業が進まないのでしょうか。理由は個々人によっても多様だと思われますが、ここでは、それを考えるための参考として、副業・兼業が難しい人の特徴4を挙げます。

4 小島明子「『採用率はたった20%』20~40代で企業相手の副業ができる人の3つの特徴 (プレジデントオンライン、2020年8月3日) を基に一部加筆。

1つ目は、専門性が明確になっていない人です。副業では、プロジェクトごとに業務を切り出し委託することが多いため、「何ができる人か」を具体的に企業がイメージできるかが重要です。自分のなかに「プロの領域」を持てるよう実績をつくる努力を行うと同時に、その経験を第三者に対して言語化できることが大切です。

2つ目は、自分の考えや経験を押し付ける人です。限られた時間で関わるからこそ、社員以上に、受け入れ企業が実現したいこと・考えを理解し、寄り添うことが重要です。自分自身が「本当にやりたい」と自然に思え、共感できる企業や事業を選ぶことも重要です。

3つ目は、時間のコントロールができない人です。副業をすれば、業務量はその分増えるため、自身のキャパシティを把握しコントロールできなければ、本業も副業も両立は難しなります。「なんのために副業をやるのか」をしっかりと考え、自分の時間をどのように捻出するのかを、副業を実施する前に整理することが大切です。

これらの特徴は、必ずしもミドル・シニア世代に限ったことではありません。しかし、そもそもキャリア自律を意識せずに、勤め先の方針に合わせて仕事をしてきた世代にとっては、頭では理解できても、仕事の姿勢を変えることは容易ではないはずです。

第3回:どうしてミドル・シニア人材の採用が進まない? 少子高齢化時代の40代以上の転職を考える

『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』

 

著者名 宮島忠文・小島明子
発行元  日本経済新聞出版
価格 2640円(税込)