パワー半導体の大手、主要顧客は自動車 SiCデバイスに注力
まずは概要を解説します。
ロームは電子部品メーカーの大手です。1954年に抵抗器(レジスター)の開発・販売で京都に創業し、1969年にIC(集積回路)の開発に乗り出しました。現在の主力製品は、主に電気の制御を担うパワー半導体素子およびアナログICです。社名は、創業製品である抵抗器(レジスター)の頭文字「R」と、抵抗値の単位「オーム」の組み合わせに由来します。
電子部品はさまざまな製品に用いられますが、ロームの場合、用途別では自動車向けが中心です。ガソリン車や電気自動車向けに、電気の変換器やLEDなどを生産します。地域別では、国内およびアジアが大半を占めています。自動車業界、特に国内や中国といったアジアの影響が強いということです。
【用途別の売上高比率(2025年3月期)】
・自動車(車載システムなど):49.9%
・産機(工場自動化機器、発電装置など):12.8%
・民生(AV機器、家電など):20.8%
・通信(スマホ、基地局など):4.4%
・コンピューター&ストレージ(パソコン、サーバーなど):12.1%
【地域別の売上高比率(2025年3月期)】
・国内:29.3%
・アジア:57.0%
・アメリカ:5.9%
・ヨーロッパ:7.7%
出所:ローム ファクトブック、決算短信
ロームの特徴は垂直統合生産体制(IDM)にあります。設計に特化し製造部門を持たないファブレスや、製造を受託するファウンドリと異なり、ロームは設計から製造まで自社で行います。在庫リスクの懸念はあるものの、品質や粗利益の向上に期待できる戦略です。
もう1つの特徴がSiC(炭化ケイ素)です。パワー半導体は従来、ウェハー材料にSi(シリコン、ケイ素)が使われてきました。近年は、省電力機能の高さからSiCも使われるようになっています。ロームは2000年から研究開発、10年からSiC半導体の量産を開始しました。09年に独サイクリスタル社を買収してからは、SiCウェハーメーカーとしての顔も持ちます。SiC事業は投資が先行しており赤字ですが、28年3月期には単月での黒字化を目指しています。
事業セグメントは主に3つです。売り上げは主に「LSI」および「半導体素子」で構成されます。なお、これら2セグメントは直近の25年3月期に苦戦し、赤字に転落しました。詳細は後述します。
【セグメント情報(2025年3月期)】
※LSI…大規模集積回路。IC(集積回路)の1つ