投資先行で利益には停滞感 今期は最終減益も株主還元は維持、配当性向108%

最後に業績を確認しましょう。

エーザイは20年3月期に最高益を達成しました。レンビマの拡大が本格化し、利益が大きく増加しました。ただし、翌21年3月期はコロナ影響で減収となったこと、研究開発や販売関連の費用が増加したことから、大きめの減益となりました。以降、売り上げは持ち直したものの、レケンビなどの先行投資に伴う高い費用水準が続き、利益は停滞の傾向にあります。

直近の25年3月期は増収増益でした。レンビマが堅調に推移したなか、ドライバーのレケンビやデエビゴが大きく成長し、業績の改善が進みました。前期比で売り上げは6.4%増、営業利益が1.8%増と、期首予想をそれぞれ4.7ポイントと1.6ポイント上振れて着地しています。

エーザイの業績(2016年3月期~2025年3月期)を表した図表
 
出所:エーザイ 決算短信より著者作成
 

なお、売り上げは今期(26年3月期)に停滞する予想です。レケンビやデエビゴは引き続き好調(それぞれ前期比72.8%増、同7.9%増)を見込みますが、主力のレンビマは各国の価格抑制策や為替影響から同5.0%減と見積もっており、連結では前期並みにとどまる計画です。

営業利益も前期並みの想定です。効率化で研究開発費や販管費の減少に取り組みますが、販売構成比の変化に伴い売上原価の増加を見込みます。純利益は、金融損益の悪化から前期比10.6%減の予想です。

【エーザイの業績予想(2026年3月期)】

・売上収益:7900億円(+0.1%)
・営業利益:545億円(+0.2%)
・純利益:415億円(-10.6%)
※()は前期比
※2025年3月期時点における同社の予想

出所:エーザイ 決算短信

配当金は前期と同額の1株あたり160円の計画です。エーザイは成長投資と安定配当の両立を掲げており、近年の配当性向は100%前後、今期も108.7%を予想します。財務の健全性は維持しつつ、レケンビを軸とした成長を通じて配当にも資金を振り向けます。

エーザイの配当金の状況(2016年3月期~2026年3月期)を表した図表
 
出所:エーザイ 決算短信より著者作成
 

文/若山卓也(わかやまFPサービス)