2. 在職老齢年金の「収入基準額引き上げ」で“働くほど損”が緩和
制度改正は働くシニア層にも朗報だ。「年金をもらいながら働くと年金が減ってしまう」という在職老齢年金制度について、今回の改正案では見直しが行われる。
「50万円の壁」ともいわれる、年金の支給停止となる収入基準額が50万円(※)から62万円に引き上げられる。これにより、年金受給者がより多く働いても年金が減りにくくなり、シニアの就労を促進することが期待される。
※2024年度基準額
3. 遺族年金の見直し
現行制度では男女で異なる扱いとなっている遺族厚生年金についても、大幅な見直しが行われる。具体的な内容は次のとおりだ。
60歳未満で死別した場合、18歳未満の子どものいない20代~50代については、男女とも原則5年の有期給付の対象となる。60歳未満の男性も新たに支給対象となり、男女の平等が図られる。
また、配慮措置として5年経過後の給付の継続や、死亡分割制度や有期給付加算の新設、収入要件の廃止、中高齢寡婦加算の段階的見直しなども行われる。さらに、子に支給する遺族基礎年金についても、支給停止に関する規定が見直される。
一方で、この改正に当てはまらず、現在と変更のない人もいるので注意が必要だ。例えば、60歳以上での死別、子ども※がいる人、改正前から遺族厚生年金を受け取っていた人、改正時に40歳以上の女性などだ。
※子ども…18歳になった年度末まで、または障害の状態にある場合は20歳未満
4. 所得に応じた負担で将来の給付を充実
負担能力に応じた公平な制度とするため、厚生年金保険等の標準報酬月額の上限が現行の65万円から段階的に75万円まで引き上げられる。具体的には、68万円→71万円→75万円と3年かけて段階的に上げていく。これにより年収が高い人の保険料負担は増えるが、将来受け取る年金額も増加する。
5. iDeCoや企業型DCも変わる
公的年金を補完する私的年金制度、確定拠出年金も見直される。これらの改正は2026年4月1日から順次施行され、2026年から2029年にかけて段階的に実施される予定だ。
●確定拠出年金のiDeCoや企業年金はどう改正されるのか。中編:「iDeCo」加入可能年齢、70歳未満まで拡大 “老後資産形成”の選択肢はどう広がる?【年金制度改正】にて詳報する。