思い出話に花が咲き
「そうそう、バイトと勉強ばっかりで、彼氏の話なんて聞いたことなかった」
「それがマッチングアプリで大手コンサル会社のエリートと結婚するなんて、人生ってわからないよね」
「ほんとほんと! どんな感じだったの? 最初からビビッときた?」
「うーん、最初は普通の人だなって思ったかな。でも話してるうちに、価値観が合うなって感じて……」
改めて話すと照れくさくて、さくらはシャンパンを一気に呷った。
「ねえ、さくら。このソファどこのなの?」
今日は私がカメラマンと言わんばかり、動画や写真を撮り続けている晴美がふと尋ねてくる。
「ありがとう。なんだっけな、イタリアのブランドで……これこれ」
さくらはInstagramのアカウントを見せる。
「へー! さすがのセンスだね。じゃあテーブルは?」
「ありがとう。テーブルは国産のだよ。旦那がこだわって買ってたんだけど、ちょっと思い出せないや」
「本物の金持ちはブランドなんてこだわんないんだよ」
史織が横から茶々を入れてくる。晴美はそのあとも、写真を撮り続け、さくらの部屋の家具に感心し続けていた。
そんな様子を見ながら、変わらないなと思う。結婚したり、仕事をしたり、こうして環境が変わっても、関係が変わらず続いているのはきっとすごく幸せなことだ。
「本当におめでとう、さくら」
会話が途切れた拍子に、隣に座った史織がそう言ってにっこりと微笑んできた。
「ありがとう」
さくらはグラスを持ち上げ、再び乾杯をした。