来週の注目ポイント

ここからは来週の注目ポイントです。

出所:内田氏

3月14日は米国ではつなぎ予算の期限日でもあります。

ここで新たなつなぎ予算が可決されないと政府機関閉鎖という状況です※。ただし報道によれば、野党にもダメージとなるため民主党も協力的で、つなぎ予算は延長され、政府機関閉鎖は回避される見込みです。

※14日に上院で可決、15日にドランプ米大統領は署名し9月までのつなぎ予算が成立した。

19日の日銀金融政策決定会合では利上げはないと予想されます。国会答弁で植田総裁が「極めて不確実性が高い」と述べているからです。この状況での利上げはまず考えられません。また、4月の利上げを示唆するような踏み込んだ発言もないと思われます。むしろ日利上げを意識させるような新しい情報が出ないことにより、若干の円安要因になる可能性があります。

20日のFOMCでは利下げはないと予想されます。3月11日にパウエル議長が「急がない」と発言しているからです。基本的に政策金利は据え置かれるでしょう。そのような中で、来週におけるドル円下落のリスク要因を考えてみます。

出所:内田氏

一つ目は米国小売売上高です。先月は1月分小売売上高が予想を下回り、ウォルマートの決算見通しも投資家の期待に届かず、さらに消費者信頼感指数が悪化したことが、「米国の消費は大丈夫か」という懸念を生みました。

米国において家計金融資産の約5割を占める株価が下落している状況で小売売上高が再び振るわなければ、金利低下と株安により、リスク回避姿勢が強まりドル円も下落する可能性があります。これが来週最大の円高リスク要因と考えられます。

二つ目が日本の投資家による対米株式の巻き戻しです。これは来週特有のものではありません。ただ、米国小売売上高の下振れなどで株価が下落した場合に起こりうる潜在的な円高要因です。

三つ目がドイツの財政拡張法案の動向です。来週18日にドイツ議会で財政拡張法案の採決が行われます。ここで可決されれば、先週見られたようにユーロドル上昇によりドル安となり、その影響でドル円も下落する可能性があります。

ただし、「緑の党」の賛成報道後のマーケット反応を見ると、ユーロドルは上昇したものの、ユーロ円上昇を通じてドル円をサポートするという、前回とは異なる反応となっています。マーケットの円ロングポジションが多いため、ユーロ高の場合、ドル円はユーロ円の円安に引っ張られて上昇する可能性が高いです。

四つ目がFOMCです。先ほど説明したように利下げ自体は行われないでしょう。このなかで注目点は2つあります。一つは年末の政策金利見通しがどのような内容になるかです。昨年12月は3.9%の見通しでしたが、これが3.8%や3.7%など、より多くの利下げを示唆する方向に変更となれば、ドル安要因となります。

もう一つがQT(量的引き締め)ペースの動向です。現在米国はマーケットに供給したベースマネーを吸収する政策をとっています。但し、債務上限問題などの混乱も予想される中、前回のFOMCではこのQTのペース減速や一旦停止に関する議論が行われていました。

実際に減速や一時停止が決まれば、金利上昇圧力となるマーケットからの資金吸収が止まることを意味し、本来なら金利低下とドル安につながると考えられます。

ただし、それは同時にマーケットに寄り添う政策との側面もあるため、リスク回避姿勢の緩和につながれば株が持ち直し、少し円安という動きになる可能性もあります。この点は両にらみで動く必要があるでしょう。

 

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「内田稔教授のマーケットトーク」はYouTubeからもご覧いただけます。

公式チャンネルと3月14日 公開分はこちらから