感度の高い指標
これら3つの指標はいずれも、市場で取引されている金融商品の価格(マーケット・プライス)です。そのため、市場参加者の心理や思惑が反映されやすく、時には実体経済の動きと乖離することもあります。市場の機微な変化をいち早くとらえる感度の高い指標だからこそ、撹乱が起こりやすい面もあります。それでも、これらの指標を注意深く観察することは実用性があると思います。
私たちは、これらの指標だけを見て景気の先行きを判断するのは危険だとあらかじめ心得て利用するのです。これらの指標は過去の経験則に基づいており、経済構造の変化や新たな経済ショックなど、過去に経験したことのない事象が起こると有効に機能しない可能性もあります。
さらに、これらの指標を有効に活用する心得として、自分自身の立ち位置を明確にすることも重要です。たとえば長期投資家であれば、短期的な指標の変動に一喜一憂する必要はありません。むしろ長期的な視点に立つのならば、短いサイクルよりも経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を重視すべきです。
このように、自分の投資スタイルや時間軸に合わせて指標を選択し、活用することが大切です。そのためには常に投資目的やリスク許容度を明確にし、それらを踏まえて投資判断を行うことが求められます。未来予測とは単に将来を言い当てることではなく、自分自身の投資目的やリスク許容度に合わせた適切な投資戦略を立て、実行するためのプロセスだということが大前提なのです。
エコノミストの経済・投資の先を読む技法
著者名 熊野 英生
発行元 明日香出版社
価格 2,145円(税込)