バブル崩壊後、厳しい状況のなか、新卒で就職活動をしなければならなかった「就職氷河期世代」。現在、30代後半から50代前半に当たります。

就職氷河期世代の老後が現実味を帯びるにつれ、社会保障への影響を含め、世間の関心が高まっています。第一生命経済研究所の主席エコノミスト・永濱利廣氏は、「就職氷河期世代を生み、そして一部ではあっても厳しい環境のままにしてきたことが、今日の少子化や長いデフレの一因になったことは事実」と指摘します。

本記事では、永濱氏に豊富なデータをもとに、就職氷河期世代の実態を解説してもらいます。(全4回の1回目)

※本稿は、永濱利廣著『就職氷河期世代の経済学』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を抜粋・再編集したものです。

未婚率の高さとパラサイトシングルの今後

就職氷河期世代の一部は団塊の世代の子どもたちだけに、人口的にはボリュームゾーンとなります。ですから、仮にこの世代が順調に就職をして結婚をしていたなら、第三次ベビーブーマー世代が誕生した可能性があります。そうすれば、今日の日本の大きな課題となっている少子化問題も少しは違っていたかもしれません。

しかし、現実には就職氷河期世代は、結婚して独立することが人生の目的ではないという価値観の変化もあった世代でもありますが、一方で安定した就職をすることができず、経済的な理由から結婚をしない人も多く、また親と同居したままという人もいるというのが本当のところです。

「年齢階層別未婚率」(図表28)を見れば分かるように、就職氷河期世代の2020年の未婚率を1980年と比べれば大きく増えていることが分かります。たとえば男性では、40~44歳は1980年の4.7%に対し、2020年は32.2%、45~49歳は同じく3.1%に対し、29.9%、50〜54歳は2.1%に対し、26.6%となっています。

 

これが、すべて雇用の不安定さや収入の低さが理由というわけではありません。かつては、男は学校を卒業したら、結婚して家を建て、子どもを育ててこそ一人前という価値観があったのに対し、今やこうした価値観は廃れ、結婚をコストパフォーマンスで考えたり、また1人でいることの自由を謳歌したりする人も増えているだけに、就職氷河期世代に限らず男性も女性も晩婚化傾向にあり、また生涯結婚をしない人がいれば、結婚をしても早々に離婚して1人に戻る人も少なくありません。