分配金は基準価額の値下がり要因
反対に、分配金は基準価額を引き下げます。分配金とは、ファンドの財産から投資家に支払われるお金です。つまり、分配金は純資産総額を減少させます。しかし投資家は保有を続けているため、総口数は減少しません。分子の純資産総額のみが減少するため、基準価額は下落します。
同じように、純資産総額100万円、総口数50口の投資信託をイメージしましょう。基準価額も同じく2万円です。この投資信託が分配金として10万円を投資家に支払うと、純資産総額は90万円に減少します。解約ではないため、総口数は50口のままです。したがって、基準価額は1万8000円に下落します。これを「分配落ち」と呼びます。
ただし、分配落ちは損失ではありません。この例では基準価額が2000円値下がりしますが、投資家は1口あたり2000円(分配金10万円÷総口数50口)を受け取っています。基準価額の値下がりと受取分配金が一致するため、トータルリターンに影響はありません。
基準価額でわかることは少ない
では基準価額を見るとなにがわかるのでしょうか。
実は、基準価額で知れることはあまりありません。たとえば、運用の優劣を基準価額で測ることは困難です。運用が全く同じでも、設定の時期が異なれば基準価額は一致しません。
たとえば「ひふみ投信」と「ひふみプラス」は、どちらも同じマザーファンドで運用されます。設定来の分配金はいずれもゼロ、信託報酬もほぼ同じです。しかし、両者の基準価額は1万円以上の開きがあります。ひふみ投信の方が3年半ほど早く設定されており、差につながったと考えられます。
【基準価額の比較】
※基準価額は2025年2月5日時点の情報
さらに、銘柄間の比較だけでなく、その銘柄1本の運用成績を知ることも難しいでしょう。先述のとおり、基準価額は分配金で下落するためです。多くの分配金を支払ってきた投資信託は、運用が優秀でも基準価額は小さくなります。
では、基準価額でなにを知れるのでしょうか。強いて言えば、金額指定で購入するときの取得口数は概算できます。投資額を基準価額で割れば、おおよその取得口数です。受け取れる分配金は口数で決まるため、分配金の見込額を把握したい人には便利でしょう。
また、口数指定でしか購入を受け付けない銘柄の場合、購入に必要な金額を把握することもできます。たとえば基準価額が2万円なら、口数指定で買うと購入額は2万円、4万円、6万円…のように2万円単位となります。どれくらいの資金を準備すればよいか、事前に把握することが可能です。
ETFにも基準価額はある
最後にETFの基準価額にも触れておきましょう。ETFは、株式のように取引所の価格での売買が一般的です。しかし、実は基準価額も算出されています。
ETFの基準価額は、取引時間中も見込額(インディカティブNAV)が取引所や運用会社のウェブサイトで公表されています。現在の取引所価格が基準価額に対して割安か割高なのか、判断する材料になります。取引に活用してみてください。