投資信託の値段である「基準価額(きじゅんかがく)」。特に疑問を持たず受け入れている人もいる一方で、「基準価額ってなに?」と思う人もいるようです。
そこで、今回は基準価額を取り上げます。基準価額がなにを表しているか、簡単に押さえましょう。さらに、理解が深まるよう基準価額が信託財産留保額で増加する理由と、反対に分配金で下落する理由も紹介します。
基準価額は1万口あたりの純資産総額のこと 算出は1日1回
基準価額とは、その投資信託の1口あたりの値段です。投資信託が持つ財産(純資産総額)を、発行されている総口数で割って算出されます。なお、基準価額は1万口あたりで表示されることが一般的です。
基準価額=純資産総額÷総口数
【参考記事】新NISAを始めたのですが「投資信託は純資産総額が大きい銘柄を選ぶと良い」と聞きました。本当ですか?
たとえば100万円分の株式を持つ投資信託が50口を発行するとき、基準価額は2万円です。この株式が120万円に値上がりすると、基準価額は2万4000円に上昇します。
基準価額の算出は1日1回です。取引の営業日が同じなら、朝に注文した人も、受け付けの終了間際(通常は平日15時半)に注文した人も、同じ値段での売買となります。
このように、基準価額は計算で与えられる値です。株価のように、取引の結果ではありません。
株式なら、投資家の買いが集まれば株価は上昇するでしょう。しかし投資信託の場合、買いが殺到しても、直接的に基準価額が上がることはありません。分子である純資産総額は増えますが、それだけ分母の口数が増加するため、基準価額への影響はニュートラルです。
信託財産留保額は基準価額を上昇させる
基準価額が上昇するには、分子の純資産総額が増加するか、分母の総口数が減少する必要があります。基本的には、その投資信託が保有する資産の値上がりに期待することとなります。
しかし、実は保有資産の値上がり以外に基準価額を上昇させるものもあります。信託財産留保額はその1つです。
信託財産留保額とは、解約時に売却代金から差し引かれるお金です。解約に伴う運用上のコストを解約者に負担させ、ファンドに残る投資家への損失を防ぐ目的で設定されることがあります。
たとえば、純資産総額が100万円、総口数が50口の投資信託をイメージしてください。このとき、基準価額は2万円です。うち49口が解約すると、98万円が流出します。純資産総額は2万円に減少しますが、総口数も1口に減るため、基準価額は2万円のままです。
しかし、信託財産留保額が0.3%なら、解約者は2940円(売却代金98万円×0.3%)をファンドに残します。純資産総額は2万2940円に増加する一方で、総口数は1口のままです。したがって、基準価額は2万2940円に上昇します。信託財産留保額が基準価額を上昇させるのは、このような仕組みからです。