牧野フライスを子会社化へ、実現なら業界2位 同意なしのTOBは成立するか
最後に牧野フライス製作所の買収にも触れておきましょう。ニデックは2024年12月、牧野フライスの完全子会社化を目指す方針について取締役会で決議しました。
牧野フライスは工作機械の大手メーカーで、業界シェアは受注ベースで6~7%に達します(2024年3月期)。ニデックによると、買収が実現した場合、グループの工作機械のシェアはDMG森精機に次いで2位になる見込みです。
ニデックはM&Aに積極的で、近年は国内の工作機械を買収する例が目立ちます。2021年の三菱重工工作機械(現・ニデックマシンツール)や2022年のOKK(現・ニデックオーケーケー)など、相次いで工作機械を傘下に収めています。
直近では2023年のTAKISAWAの買収が、事前の同意がなかったことで話題でした。今回の牧野フライスも、事前の同意がないことから再び市場の関心を集めています。
ニデックによる牧野フライスの完全子会社化は、まずはTOB(公開買い付け)で行われる予定です。TOB価格は1株あたり1万1000円、1169万株(自己株式を除いた議決権の50%)を下限に、上限を設けず買い付けます。自己株式数を除いた発行済み株式数2339万株から計算すると、買収総額は最大2573億円となります。
TOBは2025年4月4日の開始を予定しています。またTOBで株式のすべてを取得できなかった場合も、ニデックはスクイーズアウト(少数株主から株式を買い上げる手続き)などで牧野フライスの完全子会社化を目指す方針です。
この提案に牧野フライス側は難色を示します。そして、大きく2つの要望をニデックに伝えました。取得株式数の下限の引き上げと、開始時期の延期です。取得株式数の下限は、スクイーズアウトが成立しやすくなるよう議決権の3分の2以上とすることを求めました。TOBの開始時期は、検討期間の確保を目的に2025年5月9日への延期を要請しています。
ニデックは、これらの対応は不要として要望を拒否します。しかし、牧野フライス側は再び上記の要望を提出しました。ニデックはその後に開催された決算発表会で同様の主張を改めて説明します。そして、牧野フライス側の賛同を得られない場合も、TOBは計画どおり実施したいとも説明しました。
ニデックの方針から、TOBは予定どおり実施される公算です。同じく事前の同意なかったTAKISAWAは、TOBへの応募を推奨する立場を取りました。牧野フライスはどう動くのでしょうか。今後の展開が注目されます。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)