勝ち組、負け組が鮮明となる債券市場 銘柄選別を厳格に

――クレジットは全般的に割高とのことですが、例えば米国で検討できそうなセクター、あるいは逆にアンダーウェイトすべきセクターなど、細かくみるとどうでしょうか。

投資適格社債で選好されるのは、インフレに耐性のある輸送やインフラといったセクターでしょう。インフラは、契約によって利用料金に基づくキャッシュフローがインフレにリンクする面があります。また、国の政策に支えられる資本財関連も魅力的だと思います。金融セクターも悪くはありませんが、スプレッドは以前ほどの魅力には乏しいといえます。

一方、避けるべきは化学や自動車といったセクターです。バリュエーションの水準に加えて、自動車は、貿易紛争などの不確実性が高まるリスクがあることも考慮しています。

エネルギーや鉱業の一部銘柄には選好できるものがあります。中国の景気刺激策や米国のエネルギー政策の恩恵があると想定されるためです。

またユーティリティセクターには、気候変動関連を含めたグリーン投資の増加、さらに、AIの拡大を担うデータセンターが増設されることによって、電力需要が高まるといったファンダメンタルズの追い風があります。もともとディフェンシブなセクターであり、他の高クオリティ銘柄に比べても相対的なバリュエーションは魅力的です。

――ハイイールド社債についてはどうでしょうか。

ハイイールド社債の中では、債務返済までのキャッシュフローが見通しやすいデュレーションが短期の銘柄に取引が集中し、市場のポジショニングが混みあっている状態です。ファンダメンタルズが良好で利回りが相対的に魅力的であることに加え、トランプ氏の政策によって国内産業が盛り上がることでメリットを受けると考えている向きもあるのでしょう。

たしかに混みあって過熱感はありますが、しっかりと銘柄分析を行い、厳格に投資をすれば超過収益を獲得する機会はきっとあると見ています。おそらく戦略的なターゲットよりはアロケーションは下がるでしょうが、ディフェンシブな企業やクレジット面での改善余地がある銘柄に選別的に投資することが有効であると考えます。

なお、ハイイールドにとってポジティブな要因もあります。それはプライベートクレジット市場の拡大です。プライベートクレジット市場はハイイールドの企業にとって借り換えの新たな選択肢となりますので、特に信用力が低いような企業にとってはパブリックのハイイールドでの資金調達には難があったとしても、プライベートクレジットでの資金調達で一息つくことができ、生き残りの可能性が高まります。同じ債券の中でも勝ち組、負け組がはっきりするでしょう。いずれにせよ今後、アクティブ運用がますます重要になると考えられます。

――トランプ政権では、グリーン投資には逆風が吹く可能性が高いとみられていますが。

たしかにトランプ政権は、脱炭素社会への移行という側面ではベストな政権ではないかもしれません。しかし、世界的な潮流が巻き戻されることはないと考えています。グリーン投資のモメンタムが減速することはあるかもしれませんが、停止や反転はないでしょう。

米国では、連邦政府ではなくて州政府が主体となる規制が多く、脱炭素を強力に推進している州も相当あります。さらに、民間レベルにおいても、企業の取締役会はグリーン化の必要性を十分理解しています。大統領が誰であろうと、企業の長期的な価値創造のため、そして株主価値を守る戦略は変わらないでしょう。