S&P1000は、米国の中小型株1000銘柄で構成されたインデックス
では今般、日興アセットマネジメントが設定したインデックスファンド、「Tracers S&P1000インデックス(米国中小型株式)」が連動目標としているS&P1000とは、どういうインデックスなのでしょうか。
S&P100が時価総額上位100銘柄で構成された大型株のインデックスであるのに対し、S&P1000は米国の中小型株1000銘柄で構成されたインデックスです。日興アセットマネジメントの資料によると、2024年8月末時点の米国株式市場時価総額は57兆8000億米ドルで、このうち86.3%がS&P500の構成銘柄で占められているのに対し、S&P1000の構成銘柄はこのうち7.7%を占めているだけに過ぎません。それだけ1社あたりの時価総額が小さいことを意味します。
そのためセクター別構成比率もS&P100やS&P500とはだいぶ違います。
「情報技術」と「通信サービス」を合わせた構成比率は、S&P100だと50.7%を占めますが、S&P1000では12.1%に過ぎません。その代わりに資本財や金融、一般消費財が大きな部分を占めています。またウエイト上位10銘柄が全体に占める比率も、S&P100の50.3%、S&P500は34.9%に対し、S&P1000はわずかに4.5%です。そういう意味では、S&P100やS&P500に対するパフォーマンスにも、かなりの違いがあるのではないかと考えられます。
では、実際のところはどうなのでしょうか。
これについて、日興アセットマネジメントの資料では、1999年1月4日を起点にしたS&P500とのパフォーマンス比較が掲載されており、2024年8月30日までだと、S&P1000がS&P500を大きく上回っていることが分かります。このグラフを見れば、大半の人は「S&P500よりもS&P1000で運用した方が有利ではないか」と思うのではないでしょうか。
ひとつだけ注意点を挙げておきます。
データはいつを起点にするかによって、それを見た人の印象を大きく変えられます。1999年1月4日を起点にした比較では、確かにS&P1000がS&P500を大きく上回っていますが、たとえばS&P100、S&P500、S&P1000について、2014年10月31日を100として、2024年11月15日までの推移を比較すると、どうなるでしょうか。計算結果は以下のようになります。
S&P100・・・・・・382.66
S&P500・・・・・・349.58
S&P1000・・・・・・261.04
●S&P100、S&P500、S&P1000の推移(米ドルベース)
差は歴然としており、S&P1000はS&P100やS&P500に対して、大きく劣後しています。
これは年次データを見ても明らかで、S&P1000が他の2指数を大きくオーバーパフォームしたのは2016年と、2022年が他の2指数に比べて下落率を低めに抑えられたくらいで、残りの年次では、他の2指数に対してかなり後れを取っています。特に金利上昇局面において、中小型株は大型株に比べて業績が悪化しやすい特性があり、それが色濃く表れたと考えられます。
●S&P100、S&P500、S&P1000 毎年の騰落率(米ドルベース)
いずれにしても、データを見る時には複数の切り口から見た方が、より正確な事実に近づけるということです。