窪田理宇さん(仮名)は博多で、主としてスタートアップ企業を対象としたコンサル業務に従事しています。中学校に入学するまで欧州や南米で過ごした窪田さんは、英語やスペイン語も堪能な国際派のビジネスウーマンです。

その窪田さんが最近遭遇したのが、1人暮らしの父親が被害者となったある詐欺事件です。なんと、被害額は3000万円近くにも上っていたそうです。「父は元商社マンで活動的なタイプ、友達も多い。70歳を超えても実年齢よりは10歳近く若く見えるし、頭もしっかりしている」。近年高齢者を対象とした詐欺事件が急増していても、まさか自分の父親が被害にあう可能性などつゆほども考えていなかったというのです。

ビジネスエリートだった窪田さんの父親を陥れた巧妙な詐欺の手口を、窪田さんに教えてもらいました。

〈窪田理宇さんプロフィール〉

福岡県在住
42歳
女性
コンサル会社勤務
未入籍のパートナーと2人暮らし
金融資産1200万円

***
 

父が商社勤務だった関係で私の家族は外国暮らしが長く、日本に落ち着いたのは私がエスカレーター式の私立中学に入学した後です。その後の海外駐在は父が単身赴任していました。

父は仕事の合間を縫ってはまだ幼かった兄や私をいろいろな場所に連れていってくれました。南米勤務時代に訪れたマチュピチュの遺跡や、ロンドン駐在中に北欧で見たオーロラなどは今でも鮮明に記憶に残っています。

父は「24時間働けますか?」という栄養ドリンクのCMのフレーズそのもののような昭和のサラリーマンだったので、日々の業務は本当に忙しかったと思いますが、週末は必ず家で過ごすなど家族の時間をとても大切にしていました。

自分の親ながら父と母は私にとって理想の夫婦であり、いつまでも仲良く年齢を重ねていってくれたらいいなと思っていたのです。

しかし、そんな願いはかないませんでした。10年前、健康そのものだった母が50代の若さでくも膜下出血を起こし急逝してしまったからです。