条件付き運航での新婚旅行

夏芽の神経質な心配とは裏腹に、航空会社は飛行機が到着するころには台風が通り過ぎていると判断したらしく、飛行機は「条件付き運航」で飛び立った。

条件付き運航というのは、離陸はするものの、悪天候などの影響で出発空港に引き返したり、別空港に着陸したりする可能性を含んで運航することで、もしもの場合は振替手段の案内やチケットの払い戻しなどができる。とはいえ、条件付き運航により目的地以外の空港に降りることになる確率はかなり低いらしく、機内サービスのドリンクを飲みながら持参したスナックをつまんだりしていると、夏芽は先ほどまでの心配事などすっかり忘れてしまった。窓の外には美しいコントラストを織りなす雲海と青空が広がっている。

「ほらな、大丈夫だって言っただろ? 晴れ男の実力を見たか」

「もう、雲の上にいるんだから、晴れてるのは当たり前でしょ」

夏芽は笑顔で突っ込みを入れながらも、内心本当に敦也のおかげで物事が良い方向に向かっているような気がしていた。軽口をたたき合いながらガイドブックを開き、沖縄でやりたいことや食べたいものについてあれこれ話し合った。周りの乗客たちも、それぞれにリラックスした様子で空の旅を楽しんでいるようだった。

「そろそろ到着しても良いころなのにな」

ふいに腕時計を見た敦也がつぶやいた。時計の針はもうとっくに沖縄が見えてもいい時刻を指していたが、飛行機はいまだ雲の上にいる。

夏芽のなかで、一度は忘れかけていた不安が再び膨らんでいく。