金融商品取引法の改正に伴い2023年度より一定の要件を満たす企業の間で義務化された「人的資本」の開示。その背景には、国内外での「人的資本」重視の姿勢が現れている。

国内では「人材版伊藤レポート2.0」や「人的資本可視化指針」が策定された。また国外でも欧州委員会(EC)やアメリカ証券取引委員会(SEC)が企業に対して非財務情報の開示を求めている。加えて、世界経済フォーラム(WEF)や国際統合報告評議会(IIRC)、ISO 30414 などの団体も、企業の非財務情報開示に関するフレームワークや開示項目を提示している。

こうした変化は投資家のみならず、就活を行う学生にも大きな影響を与えるだろう。

人的資本投資とは何なのか

学生の中には「人的資本」と言われてもピンと来ない人もいるだろう。

EY新日本有限責任監査法人の「令和3年度産業経済研究委託事業 (人的資本投資の実態把握等に関する調査)報告書」(2022年3月)では、企業の人的資本投資の項目別の認識を以下のように記載している。

①人材獲得(採用広告等)
②人材育成(教育訓練費等)
③人材保持・活用(給与等)
④人的資本基盤(HR システム費用等)
※①〜④に該当しないエンゲージメントスコアを採用している企業もある

昨今の学生はインフレによる実質賃金の減少や終身雇用崩壊により将来への不安を強く感じている。それゆえ上記の中でも特に注目する項目は「②人材育成(教育訓練費等)」「③人材保持・活用(給与等)」になるだろう。

本稿では学生・就活生が人的資本投資を自分ごととして捉えられるよう、前述した2つの項目に焦点を当てて説明していく。