2024年からNISA(少額投資非課税制度)が抜本的拡充や恒久化され、新NISAとして定着しつつあります。実際、若年層の金融リテラシー向上を掲げる弊団体へ興味を持つ若者も増えており、確かな手応えを感じています。一般にメディア等でも「将来不安を抱き、老後の資産形成などを目的に投資を始める若年層が増えている」という報道はよく目にしますし、弊団体にもそのような趣旨で取材依頼がくることは珍しくありません。

一方で若年層の投資事情を観察している若者の一人として、将来が不安だから投資するという半ば固定化された考え方には違和感を覚えます。また、若年層の立場で政府の新NISAを含む資産所得倍増プランを取り纏(まと)める議論に参画した一人として、新NISAという言葉だけが独り歩きしてしまっているように感じます。

今回は、若年層の投資事情を踏まえながら、政府のすすめる資産所得倍増プランを紐解き、若年層が投資とどう向き合うか考えます。

若者の投資の光

<年代別NISA口座数の推移>

※2023年末まで一般NISA・つみたてNISA口座数/2024年より新NISA口座数
日本証券業協会「証券会社におけるNISA口座の開設・利用状況」の2024年6月公表データ(外部サイト)をもとに筆者作成

若者の投資の現状について、若者視点で見ていきます。まず、光の側面としては当然、関心が確実に高まっていることが挙げられます。私の周りを見ても感じるところですが、年代別のNISA口座数の推移でも裏付けされています。ターニングポイントとなっているのがコロナ禍後です。上に示したグラフからも、口座数増加の伸びが明らかに加速していることが読み取れます。また、2024年は3カ月のみのデータであることを考慮すると新NISAの効果が顕著に認められます。

従来から(真偽はさておき)世間をにぎわせた老後2000万円問題を筆頭とする将来不安、勉強といった需要はありましたが、コロナ禍後にメディアでの報道、おうち時間、将来不安増大が引き金となり、さらには足元のインフレの波がこのトレンドに拍車をかけたものとみています。今後も若者とも親和性の高いインターネット、NISA等の優遇制度が呼び水となり、このトレンドは継続すると思われます。

<世代別投資スタンスと日経平均株価>

出所:(画像上)岡三証券「資産運⽤トラウママップ」(外部サイト)より筆者作成、(画像下)日経平均プロフィル(外部サイト)より筆者作成

そもそも若者のリスクマネーが投資に向かっている最大の要因はトラウマがないことに尽きると考えています。世代別の投資スタンスを語るときによく引用される表を参考にすると、私はアベノミクス世代、ちょうど私の親世代がトラウマ世代になります。便宜的に日経平均株価の推移に当てはめると、トラウマという表現の意味がよく分かります。

いまだに私の両親も「投資は危ない」とどこか懐疑的に思っているようでありますし、弊団体にも(成人年齢が引き下がったものの)「自分は興味あるけど、親の反対で口座開設はできない」なんていう声も珍しくありません。

一方で、今の若年層はいわゆる投資アレルギーなるものはないですし、むしろ良いイメージを持っている人が多い印象です。これは金融市場の安定度、インデックスのパフォーマンスにも裏付けされているものです。残念ながら有名人をかたった新NISA詐欺のような、これに付け込んだ、詐欺やトラブルが後を絶たないことも事実ではあります。