人材育成の見方  

「人材育成」と言われてもその内容は多岐にわたる。指標としては、研修参加率、研修参加時間、有資格者数の増加数などが挙げられるが、今回は有資格者数の増加数に関わる「資格手当」について注目したい。

今年5月、出版大手KADOKAWAが公表した「資格取得支援制度」がネットをにぎわせていた。社員の自律的なキャリア形成を支援する趣旨で、対象資格を取得した社員に対する支援金の上限を100万円から1000万円まで大幅に引き上げたのである。

崩壊元年とも言われる2019年、当時のトヨタの豊田章男社長や日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長が終身雇用の限界を語って以降、雇用形態は「終身雇用」と「年功序列」から「メンバーシップ型雇用」と「成果主義」に変わっていくと言われた。また、2024年9月時点で行われている自民党総裁選挙でも雇用流動性を高めるための規制緩和を公約にする候補もいる。これから就活を行う学生にとって、将来的なキャリア形成はこれまで以上に重視したい項目となる。

実際、20卒から24卒の学生が就職先を選ぶポイントについても、「育成」や「キャリア支援」に関連する項目を選ぶ就活生が増加している。学生にとっても「資格」という存在は、キャリア形成を行う上でもイメージしやすい。企業の提供する資格取得支援制度は、学生が人材育成の観点から参考にできる指標の1つと言えるだろう。

人材保持・活用の見方 

「人材保持・活用」を一言で表すならば「待遇」である。給与や賞与はもちろんのこと、福利厚生もこれに該当する。就活生向けの多くの調査では「働きやすさ・やりがい」と並んで上位にくる項目ではあるが、「待遇」に対する注目点も変化しつつある。

毎年、春闘の季節になると注目されるのが初任給とベアの値である。学生に注目されるのは「初任給」であるが、最近では「中堅層の平均給与」にも注目が集まっている。

厚生労働省が発表した2023年の「賃金構造基本統計調査」によると、中堅層の賃金が減少傾向にある。育休後の職場復帰や会社のポストによる賃金格差が発生するタイミングのため必ず該当するわけではないものの、ライフステージ的に金銭負担が多くなる中堅社員時代に賃金が上がるかどうかは学生の関心事であり、就活時にも確認しておきたい情報と言えよう。

***
 

今回は、学生・就活生向けの目線から「人的資本投資」の見方を考察した。持続的な経済成長が続くアメリカでは、企業価値に占める無形資産の割合は日本を大きく引き離している。

長い経済停滞から抜け出す光明が見え始めた今、日本の労働市場は終身雇用や厳しい雇用規制からの変革を迫られつつあり、会社によるキャリア形成から自律的なキャリア形成が求められる社会となっている。

学生・就活生は関心事が時代にあわせて変化する中で、企業・学生の双方のミスマッチ招かないための参考として「人的資本投資」への視点を生かしていくべきではないだろうか。