父親の会社での出会い

森山さんは、心療内科で「不安障害との診断を受け、精神安定剤を処方される。母親に伝えると、「気持ちが弱いだけだ」と冷たくあしらわれた。仕事をせず休養している森山さんのことが気に入らない母親は、日が経つほどイライラし始める。

そんな不機嫌な母親にうんざりしていた父親は、森山さんに自分が勤めている建築コンサル会社でのアルバイトを勧める。父親同様、母親が怖かった森山さんは、二つ返事で受け入れた。

そんなある日、仕事から帰宅すると母親が言った。

「一体、いくらあるの?」

怒ったような、呆れたような口調だった。森山さんは、「あー、バレた」と思うと同時に「これで苦しみも終わる」と思った。

母親は勝手に森山さんの部屋へ入り、森山さんの借金返済関係の書類を見つけたらしい。

薬物依存症で逮捕された俳優が、逮捕される瞬間、「ありがとうございます」と言ったというが、「これで苦しみも終わる」という言葉から、森山さんも買い物依存症だったことがわかる。

借金は、全額両親が肩代わりしてくれることになった。

その翌年、森山さんは道内の地域開発に関わる会社に転職し、建築コンサル会社で知り合った3歳上の男性と交際がスタート。

男性は教員になる夢をかなえるために会社を辞職し、教員採用試験の勉強をしていた。そして2年後、見事合格すると、森山さん26歳、男性29歳で結婚した。

地獄への兆し

森山さんは結婚後、夫の転勤のため退職し、29歳のときに長男を出産。33歳のときに、夫の地方勤務終了を見越して夫の実家を2世帯住宅へ建て替える。だが、地方勤務が延長になったため、完成後は義両親だけ入居した。

「夫は親孝行のつもりで、まだ住んでもいない2世帯住宅の固定資産税や光熱費だけでなく、義両親にお小遣いをあげたうえ、義両親の家電が壊れる度に買ってあげていました。『1人っ子で、大切に育ててもらったから恩返ししたい』と言われたら、専業主婦の私は何も言えませんでした」

しかし、自分たちが住んでいる賃貸の家賃や生活費、2世帯住宅のローンなど、想像以上に出費が膨らむ。夫のボーナスも1/3は住宅ローンの返済に消え、夫の趣味のクラッシックカーの維持費が重くのしかかる。

そこへ追い打ちをかけるように、想定外の第2子の妊娠が発覚し、34歳で次男を出産。
長男が小学校に上がるタイミングでようやく地元に戻れることとなる。

36歳の森山さん、39歳の夫、6歳の長男、1歳の次男の4人と、先に住んでいた80歳の義父と68歳の義母との2世帯住宅での同居が始まった。

●結婚をきっかけに、ようやく森山さんに穏やかな日々が訪れそうに思えましたが、高齢の義両親との同居生活は新たな地獄の始まりでした。義父からの度重なる人格否定に、森山さんは家族に隠れてまた借金を積み重ねてしまいます……。後編【「お母さんもADHD」義両親に土下座、依存症の借金で学資保険を解約、息子は不登校…それでも手にした幸せな家庭】