DBもDCもインフレには無防備だがそれぞれに必要な対策とは?

2つ目のテーマは「インフレへの備え」です。公的年金では、物価や賃金の変動により給付が改定(ただし、少子高齢化の影響などのマクロ経済の影響がスライド調整)されますが、わが国の企業年金には通常、インフレに応じて給付を見直す仕組みはありません。なお、市場金利などに応じて給付を見直す「キャッシュバランスプラン」も、物価ではなく金利に連動させていることが多いため、必ずしもインフレに対応できるわけではありません。年金給付の実質的価値をインフレで目減りさせないためには、なんらかの対策が必要となります。

インフレ対策の具体的な方法は、DBとDCで異なります。まずDBでは給付の引き上げが考えられます。給付の変更は年金財政や企業の掛金、財政に影響を与えるため、容易ではありませんが、労使間の協議などを通じた見直しがあることが望ましいのではないかと思います。一方、DCでは給付額は加入者等の運用判断次第です。しかし、わが国では現役世代の多くがインフレを経験したことがないでしょう。したがって、インフレになるとどのように消費、資産運用を行えばいいのか、事業主が投資教育などを通じてきちんと加入者に伝えていただくということがDCにおけるインフレ対策になると思います。

資産運用立国実現プランの進捗に伴いアセットオーナーの役割がより重要に

最後のテーマは立国プランへの対応です。立国プランを巡っては、運用・ガバナンス・リスク管理の観点からアセットオーナーに求められる役割を定めた「アセット
オーナー・プリンシプル」が今夏にも取りまとめられる予定です。

企業年金もアセットオーナーの一員として、よりインベストメントチェーンを意識した資産運用、資産運用体制の構築が求められると思われます。少なくともこれまで一部にあったような取引先との関係を考慮した運用商品選定は、間接的にインベストメントチェーン、市場の合理性をゆがめる可能性があるため、見直しが必要となるでしょう。

ほかにも立国プランには企業年金の改革に向けたさまざまな施策が盛り込まれており、DB・DCに共通する施策として前述の「見える化」が挙げられています。またDBに対しては、運用委託先の評価・変更による利益改善が求められ、さらに小規模DBには企業年金連合会による共同運用事業なども促すとしています。DCに関しては、加入者が運用方法をより適切に選択できるよう、各企業の取り組み事例の横展開などが要請される見込みです。

立国プランの詳細はまだ検討段階ですが、少なくとも企業年金はアセットオーナーの一員として、これまで以上に最善を尽くすことが求められるでしょう。