今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は、新NISAを活用した資産形成について解説した花村泰廣編著『新NISAを最大限使いこなすにはどうすればいいですか? 目的別・年代別のシミュレーションで徹底解説 』の一部を特別に公開します(全4回/本記事は第1回)。同書を解説する無料セミナー情報も!
※本記事は花村泰廣編著『新NISAを最大限使いこなすにはどうすればいいですか? 目的別・年代別のシミュレーションで徹底解説 』(日本実業出版社)から一部を抜粋・再編集したものです。
貯蓄ファーストから投資ファーストへ
日本の家庭の金融資産は、株式や投資信託よりも現金・預金が圧倒的に多いです。日銀の資料「資金循環の日米欧比較(2023年8月)」によれば、日本の家計における現金・預金比率は54.2%。それに対して米国は12.6%、欧州(ユーロエリア)は35.5%と、日本が突出しています。日本ではどこか「預金が第一。投資は余ったお金でするもの」という意識があります。
しかし、この貯蓄ファーストの考え方は、時代に合わなくなってきています。これからは、お金はできるだけ先に投資に回して運用し、必要なときに現金化して使う―このような投資ファーストな資産管理をスタンダードにしていく必要があるでしょう。
理由は、物価の上昇、つまりインフレです。2023年9月の消費者物価指数(総合指数)は、2020年を基準にすると、6.2%も上がりました。かつては、預金の金利が6〜7%と高く、収入も右肩上がりだったため、物価が上がっても対応できていましたが、いまの普通預金は大手銀行だとおおむね0.001%と超低金利、そのうえ物価上昇率ほど収入が増えない状況です。インフレが続くと、1万円で買えたものが時間がたつと同じ価格で買えなくなってくるため、資産の目減りが起きます。これからの時代は、預金だけではむしろリスクとなるケースもあるのです。
生活防衛のために、資産運用が必須
あらゆるものの値段が上がってきた昨今ですが、前述した通り、貯蓄だけではこの先はもっと苦しくなることが目に見えています。必要な老後資金も、生活費が上がっていく以上、当然増えるでしょう。年金は物価に合わせて調整されますが、完全に連動するわけではありません。少子高齢化で現役世代の負担が重くなりすぎないよう、「マクロ経済スライド」の仕組みによって年金の支給額が抑制されるからです。
こうした背景を踏まえると、少なくともインフレに負けない程度には、資産運用していく必要があります。もちろん、投資はリスクがありますので、一時的に値下がりしても困らない範囲で行うことが大切ですが、生活を防衛する意味で、誰にとっても投資は欠かせない時代になったと思います。