先に投資する仕組みをつくることが何よりも重要

「投資の必要性は理解できるが、生活費を捻出するだけで手一杯」という声もあります。しかし、それでも工夫しだいで月5000円くらいはなんとか用意できるのではないでしょうか。飲み会は一次会で帰るようにしたり、会社にはお弁当や水筒を持参したりする。スマホは大手キャリアから格安な通信会社に乗り換え、電気やガスもより料金が安い会社と契約する。ふるさと納税はしっかり使う……など、できる節約をすれば、月5000円くらいからであれば、投資が始められるのではないでしょうか。

少しでもよいから、先に投資に資金を回し、残ったお金で生活する。この仕組みさえつくれば、いまの時代はオートモードで資産形成ができます。ちなみに、筆者(花村)が新卒で働き始めたころは、積み立てで買える投資商品といえば、自社株ぐらいでした。いまは投資信託を利用すれば、世界中の株式でもREITでも、少額から積み立てで買えます。資産形成しやすい、非常に恵まれた時代なのです。

金額は、後からいくらでも調整できるので、とにかく先取りで投資する仕組みをつくることが大切です。「余ったら投資」ではなく、「先に投資」の意識を、ぜひ持つようにしてください。

老後資金対策にはiDeCoの併用も検討したい

先取りで自動的に投資できるお得な制度としては、「iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)」もあります。iDeCoとは、個人で用意する私的年金制度です。つみたてNISAや新NISAのつみたて投資枠と同じように、自分が指定した金額で、投資信託などの金融商品を積み立てで購入する仕組みです。

iDeCoもNISAと同じく、利益にかかる税金が非課税となります。さらに積み立てする掛金は全額所得控除の対象となり、所得税や住民税を軽減できます。掛金の拠出は65歳になるまで可能で、75歳になるまで引き出さずに続けることができます。

NISAとの大きな違いは、原則60歳まで引き出しできないこと。掛金は働き方によって上限額が決められていること。そして、将来受け取る際は、所得としてカウントされることです。一括で受け取る場合は「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」が使えるので、一定額までは非課税ですが、金額によっては受け取る年の所得税や住民税が増えたり、健康保険料が上がってしまったりする点に注意が必要です。

それなら、「iDeCoよりNISAを使うほうがよいのでは?」と思われるかもしれませんが、iDeCoの節税メリットは非常に強力です。また、60歳まで引き出しできないというのは、老後資金をつくる目的を考えれば、メリットでもあります。特に、厚生年金がなく、公的年金が手薄なフリーランスや自営業の方は、iDeCoの掛金が月6.8万円(国民年金基金等との合算)と、多く設定されています。節税しながら老後資金をつくることができるので、ぜひNISAとの併用を検討したいところです。 

NISAとiDeCoを併用すれば、iDeCoは老後資金用、NISAは途中のライフイベント用と使い分けることもできます。第3章、第4章では、iDeCoを併用した投資シミュレーションも紹介していますので、ぜひ参考になさってみてください。

また、会社員で、会社の「企業型DC(企業型確定拠出年金)」に加入している人は、この機会に内容の確認をしてみましょう。企業型DCで投資信託が選べる環境にありながら、定期預金で積み立てている人が、実は非常に多いのです。NISAやiDeCoで投資を始めるのを機に、企業型DCの運用についても見直しておきましょう。

●第2回【20代・30代は「時間がある」特権を活かすべし! 投資の始め方を指南】では、年代別・新NISA 活用のポイントについて解説します。

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